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心を込めて
親が子を思う気持ち。
それはどの親も同じであろう。
愛という、言葉の上にしか無い不明瞭なものを計る器具は存在せず、数値化する事は出来ない。
けれど、それは確かにあるのである。
想いを、心を込めれば、愛は確かにそこに生まれる。
喜一はまさしく愛を込めたのである。
いや、現在進行系で愛を込めて皿を洗っているのである。
「……」
だが、これは特別な行いではない。
彼はいつもこうして洗っている。
愛……それを語るには、彼はあまりにも若過ぎる……。
実際、それがどういうものであるのかを明確に語る言葉を彼は持たない……。
だが……それでも、それに限りなく近い気持ちを常に持って洗っているのは確かである。
「やるね」
喜一の皿洗いを後ろで眺めていた羅人は、思わず笑っていた。
蔑んだような軽い笑みではない。
心から出た、太い笑み。
それを浮かべていた。
「交代したくなったら、いつでも言ってよ」
「……」
無言で頷く喜一に、羅人は満足げに厨房へと引き返していった。




