ごちそうさま
「なんかわからんけど、ご馳走さん」
「帰るのか?」
「バーでは三杯までっていう自分ルールがあるのに、いつの間にやらもう五杯目。深酒せんよう気を付けてたのに……全く、それもこれもここの居心地良すぎたせいやからね?」
「すまない」
「今の褒め言葉ってわかっとるやろ?」
「ああ」
「こいつ……ま、いいわ。旨い酒に免じて勘弁してやる。そういうわけでわたしはぼちぼち帰るけど、舞はどうする?」
「あ、それなら私も御暇します。マスター、お会計をお願いします」
「畏まりました」
「支払いは一緒でいいよん」
「先輩、そんな……奢って貰うなんて悪いですよ」
「口ではそう言っとるけど、顔は笑ってるぞ?」
「え? あ……あはは。酔ってるみたいです」
「ま、後輩は先輩に大人しく奢られときなさい」
「お言葉に甘えます。ごちそうさまです。先輩」
「いいてことよっ」
舞と斗真は笑いあった。
そうして二人は「ごちそうさまでした〜」と声を揃えて、手を振って気持ちよさそうに店から出た。
入れ替わり、立ち替わり。
出ていく客。入ってくる客。
それを繰り返して、少し店が落ち着いた頃に、
「大したものだ」
羅人が、喜一の背に声を掛けた。




