魔法の一時間
一杯……二杯……三杯……酒が、進む。
「次は何頼もうかなぁ。えーっと……」
「ほい。メニュー」
「あ、どうもありがとうございます。先輩」
「いえいえ」
「そう言えば昨日のテレビですけど、先輩見ました?」
「あー、あのUFO呼ぶとか言いよったやつ?」
「はい」
「結局来たわけ? UFO?」
「来ましたよ! 来てました!」
「え〜? ほんとにぃ?」
「ホントですって!」
「いやでもどーせあれやろ? 何か光の点が動いてるだけのやつなんやろ?」
「いえ、違います。ばっちり円盤型のやつがばーって来て、ごーってなって、どーん! って着陸してました。世紀の瞬間でした」
「うそ……マジ?」
「嘘です」
「嘘かい……しょーもない嘘つくのやめてくれん?」
「酔っちゃったみたいです」
「もう三杯目やもんね」
「嘘です。酔ってません。まだ三杯目ですから」
「また嘘かい」
くだらない会話をして、二人で笑い合う。
不思議な感じだった。
まるで、この店に二人だけしかいないような。
二人きりの空間が出来ているような。
魔法みたいだな。と斗真は思った。
ちらりと、彼女は皿を洗う男を見た。
その時、男は不意にぴたりと手を止めた。
「一時間経ったかな」
魔法が、解けた。




