カクテル
「マスター! わたしいつものねん」
「畏まりました」
「舞はどーする?」
「えっと……こういうところあまり来たことなくて……その……」
「そんなら一緒のやつにする?」
「うーん……そうですね」
「では同じものをお作りしましょう」
柔らかに応対し、速やかにレシピを並べる唐馬。
その様子を好奇心に満ちた目で眺めている斗真。
彼女はカクテルが作られているところを見るのが好きだ。
いくつものリキュールが、調和を乱さぬよう限りなく完璧に近いバランスで混ぜ合わされていく過程。
そこに掛け合わされるフルーツ。
潰されるミントの葉。
ワンプッシュされた柑橘類のミスト。
キレのある、鮮やかな手並みで生み出されるそれは、芸術品と言っても過言ではない。
「ほんと、キレイやなぁ」
斗真は感嘆の声を漏らした。
「す、すごいですね……」
隣の舞もまた、同じく。
「流石だなぁ」
カウンターで皿を拭いていた羅人もまた、呟いた。
「液体を使わせたら右に出るもの無し。流石は唐馬さんですよ」
「昔の事だよ」
唐馬が低い声を発した。
謙遜ではない。その話題を拒んでいるかのような、硬い声色だった。




