開始のゴングはオーダーと共に
店に客が入り始めた。
入り乱れるオーダー。それを的確に作っていく、マスターの唐馬。
「一時間交代くらいにしておこうか」
それだけ言って、羅人はカウンターの裏手。流し台の前に立った。
袖をまくり、そこにあったスポンジを無造作に手に取る。
自前の物は使わないようである。
「とりあえずビールで」
そういうオーダーが出る。
「どうぞ」
マスターの手により、すぐに差し出されるビール。
暫しの間をおいて、空になるグラス。
十分もすれば、いくつものグラスがカウンターの向こうから返ってくる。
故に、皿洗いは既に始まっている。
どのグラスにどのような汚れが付いているのか……極々自然体であるが、その見極めを、羅人は怠ってはいない。
「ばんわ〜。ん? あれ? 喜一はどしたん?」
そこに現れた、水戸斗真。
「喜一君なら裏にいるよ。呼んでこようか?」
羅人は笑顔を浮かべつつ応えた。
「いやいや、いいですよ。どちらさんか知りませんけど、お気遣いなく。わたしらは酒を飲みに来ただけですから。な?」
「は、はい……」
斗真と、その連れの戸賀舞。
二人は、奥の席に並んで座った。




