呑み終わりて
子丑寅未龍午未申酉蛇戌亥。
暦を表す十二体の生き物。
協会では、それは称号として扱われている。
会長である在膳九龍を龍として、残りの十一のそれは、協会構成員2000万人の、その頂点に立つに相応しいと在膳九龍が判断した11人に与えられる名誉ある称号である。
卯益羅人は、その中で卯を司っている。
卯。
兎である。
一見すると可愛らしい印象を受けるが、羅人には可愛らしさなど一片もない。人懐っこい笑みを浮かべ、人辺りの良い態度を取るのは得意だが、それが兎の特徴かと問われれば、そうではない。
内に秘めるは、野生。
これからそれが開放される。
「最初は俺からやらせて貰ってもいいかな?」
残り五分のところで、羅人が尋ねた。
「構わない」
喜一は頷いた。
皿洗いに、先手も後手もない。
そう思っている風であった。
「いいね。良い顔してるよ。喜一くん」
ちびりと、ウイスキーを口に含む。
残り四分。
……三分。
香りを嗅ぎ、ウイスキーを舐めるように飲む。
……二分。
…一分。
「こんばんは〜」
少し酔った様子の中年男性の声が、店内に響いた。
「さて、始めようか」
羅人は残った僅かなウイスキーを一息に煽り、立ち上がった。




