皿洗い十分前
「協会の人と、野良の人がやったんだってね」
「そのようですね」
「俺さ、スマフォで見てたんだよね」
「そうですか」
「凄かったよね」
「凄かったとは?」
「野良の人がね、一瞬で三枚も皿を洗ってたんだよ」
「それは確かに凄いですね」
「中々出来ないよ。一瞬で三枚なんて」
男はそこでまたちびりとウイスキーを口に含み、口を開いた。
「その人、そこにいるんでしょ?」
「……」
「その奥に」
男がグラスを傾けて指したのは、厨房である。暖簾がかかっており、客席から奥は見えない。
「会ってみたいなぁ。興味あるんだよなぁ。彼に。……なあ、君もそうだろう? 喜一君」
なのに、まるで見えているかのように、男は語っている。
「お客さん」
「唐馬さん。芝居はここまでにしときましょうよ」
男は、唐突に改まった。
「……」
「そう警戒しないでください。俺は会長の命令を受けて来たわけじゃないんですから」
「では、何の為に……?」
「見極めたい。……いいや、体験したい。ってところですかね」
「それは、つまり」
「そうですよ。お察しのとおりです」
男は唐馬を見据えて、
「十分後に、皿洗いを始めます」
そう宣言した。




