師の名
決闘は終わった。
しかし、皿は運ばれてくる。
集めた皿は、結果如何に関わらず、洗う。
それが皿洗い師の仕事であり、流儀である。
「千歳喜一。一つ、聞いていいですか?」
皿を洗いながら、陽が尋ねた。
口調は、重々しい。協会員として、敗北の許されなかった決闘で、敗北した。
その事実に、彼女の精神は押し潰されそうだった。
だが、一つ。たった一つだけ。聞いておかなければならない事があった。
「何だ?」
皿を洗いながら、いつもと同じ、淡々とした声で、喜一は応えた。
勝利の余韻に浸っている様子は無い。仕事をしているだけ。といった風である。
それが、より一層、陽を惨めにさせた。が、それでも、彼女は聞いた。
「あなたの師は、誰ですか?」
これ程の使い手が、野良のはずがない。
ただ単に、才能という言葉では片付けられない。
必ず、師がいる。
では、それは誰なのか?
これ程までの実力者を育て上げた師とは、一体何者だ?
この問いに、
「唐馬歩だ」
彼は、答えた。
「唐馬——!?」
その名に、陽は驚愕した。
なぜなら、その名は……
かつて、協会のトップにいた者の名だったからである。
とりえあえず第一部完。
しばらく更新停止します。
修正とか書き溜めとか、諸々済ませたら第二部始める予定です。




