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戦いは……
並みの皿洗い師が持つ能力は、当然、喜一も持っている。
隅々まで皿の汚れを見る事の出来るその眼は、完全な見切りを可能とする。
故に、極限まで最適化された動作で、放たれたそれを回避するのは、難しい事では無い。
「当てたつもりでしたが……」
「……」
「よく、躱しましたね」
低く、囁くかの如く、陽は怜悧な声を発した。
「……」
その冷たい声と、殺意に満ちた視線を受けても、喜一は動じ無い。
彼は、黙っている。
あるいは、備えている。とでも言うべきか。
事実、陽は喜一の沈黙を、抗戦の意志あり。と取っていた。
油断なく、隙を見せず、自分の次の動きに注視している。
あまりにも冷静すぎる喜一のリアクションを前にして、そう思った。
だからこそ、
「次は、当てます」
彼女は、その静けさを穿つ。と言わんばかりに、指先に、力を込めた。
が、同時に、
「待ちな」
弓徒が、二人の間に、入っていた。
「……あなたは協会員のはずでは?」
「協会員さ、俺は。だからこそ、言わせて貰う。協会員なら……いや、皿洗い師なら、皿洗いで闘ったらどうだい?」
不意の割り込みに疑問を口にした陽に、弓徒は、そう言った。




