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攻撃
一般的に、皿洗い師は、普通の人間である——とは思われていない。
皿洗い師は、常人を凌駕する能力を有している。という事を、誰もが知っている。
皿洗いが終わるまで、不眠不休で流し台に立ち続ける、耐久力。
その間、皿を持ち、洗い続ける、腕力。
水を無駄にしない、速度。
どれをとっても驚異的な、パワー・スピード・タフネス。
それだけでなく、汚れを読み取る、洞察力もまた優れている。
これ程の能力を持っている人間が、弱いはずが無い。
一説によると、室内……特に、流し台等の限定的な状況下であれば、皿洗い師三人で、銃火器を装備した分隊規模の敵を完全に制圧出来る。と言われている。
——故に、陽の動きは、常人の斗真の瞳には全く映らなかった。
斗真が目にしたのは、結果のみだ。
普段耳にする事の無い、硬質な音と共に、喜一の遥か後方にある自動ドアの、その強化ガラスに、鋭い亀裂が生じていた。
「……は?」
斗真には、何が起こったのか理解出来なかった。
しかし、これは複雑な事象ではない。
皿洗い師の持つ技能を活かした、至極単純な攻撃であった。




