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洗い方
「でなー。わたし気になって聞いたんよ。その明太子って、フクサヤ? それともフクヤ? って」
「ああ」
「そしたらなーあいつ、え?それ何が違うん?とか抜かしよってなぁ」
「そうか」
寝癖の付いたボブカットの茶髪に、縁の大きな眼鏡。服は紺のスウェット。
喜一の背後で椅子に腰掛け喋っているのは、やる気の無い女の代表と言った容姿の女性。
彼女の名は水戸斗真。
度々自宅で女子会を開いては翌日に喜一を呼び、皿を洗わせる。という大口の雇い主である。
「そんでな〜」
喜一は斗真の話しに耳を傾けている。
しかし、意識は皿に集中している。
瞬時に汚れの種類を見極め、皿を拭き、洗い流し、ラックに置く。
流し台には皿を置くスペースが無い。故に、一回一回水で洗剤によって生じた泡を落とす必要がある。
一見すると非効率。
だが、喜一はただ漠然と皿を洗っているのではない。
彼は洗剤によって生じた泡を、的確に残りの皿へと落とし込んでいる。
これにより、多少だが油汚れは落ちる。
常に先を意識した、次へと繋ぐ洗い方。
彼の皿洗いに、無駄は無い。




