29/184
一触即発
協会は協会以外の皿洗い師を認めない。
何故か?
それは偏に、皿洗い師の為である。
皿洗いは誰でも出来る。
しかし完璧に皿を洗える者は、皿洗い師以外には存在しない。
家事の一環として行われる皿洗いとは、根本からして異なるのが、皿洗い師の皿洗いなのである。
故に、協会に所属する皿洗い師は極限まで己を磨き上げ、超越的な技術を取得するに至る。
有名な言葉がある。
「協会以外の皿洗い師は皿洗い師に非ず。見付け次第粛清すべし」
これは、世界皿洗い協会の現代表である、在膳九龍の格言である。
だからこそ、陽は、喜一の身分を聞いた瞬間、場の空気を一変させた。
「貴様、今何と言った?」
「……」
隣にいた斗真は、重い空気に圧され、数歩、たたらを踏むように、よろけた。
「……」
弓徒も、不意に言葉を発する事は出来なかった。
一触即発。
そうとしか言い表せない空気の中で、喜一は、静かに口を開いた。
「フリーの皿洗い師だと言った」
「粛清する」
陽の殺意が、放たれた。




