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協会の者
「む……」
「……」
突然現れた、ウェイター風の女に、弓徒と喜一は同時に目を細めた。
皿洗いというのは、洗う前から始まっている。
この言葉が示すように、皿洗い師は皆鋭い観察眼を備えている。
彼らのそれが捉えたのは、女の手の湿りだった。
化粧室で少し手を洗った、という程度のものではない。
それよりも、もっと水分を含んだ手。
何時間も水に触れていた手。
爪は短く、丁寧に切り揃えられており、年頃の女性だというのに、何の装飾も施されていない。
後ろで一つ結びにされた長い髪。
飾り気は無いが、整えられた格好。
そこに、これといって特筆すべき点は無いが、強いて言えば、ワイシャツの袖が僅かによれている。
たったこれだけの情報量だが、それだけで、女が何者か推察出来た。
そしてその推察は、女の目を見て確信へと変わった。
何の感情も感じさせない、深い黒の瞳……この瞳を、弓徒は知っている。
この場の誰よりも、彼は、よく知っている。
これは……。
この眼は……。
「お前、まさか……」
協会の人間の眼、だという事を。
「はい」
弓徒が言葉を発し終える前に、女は静かに、肯定した。




