26/184
登場
「二人ともお疲れちゃ〜ん」
自前のスポンジを入れた鞄を肩に担ぎ、ホテルから去ろうとしていた喜一と弓徒だったが、背中に掛けられた声に、二人は振り向いた。
「お嬢! ……なのか?」
「水戸……か?」
彼らに声を掛けたのは、水戸斗真だ。
聞き慣れた声で、それはわかっている。
しかし、彼らは斗真を斗真だと認識出来なかった。
なぜなら、今宵の彼女が、紛う事無きお嬢様だったからである。
普段のだらしない格好ではなく、赤を基調とした肩出しのドレスに身を包み、その上、メイクをしていない事を誤魔化す為の、無駄にデカい伊達眼鏡も掛けていない。
「ちょっとちょっと! いくらなんでもその反応は酷くない!?」
「いや……だって、なぁ? 普段と違いすぎるっつーか……なんつーか……」
「ああ……」
ハイヒールで強く床を踏みつけ、怒りを露わにする斗真の前で、弓徒と喜一は顔を見合わせ、苦笑した。
その時、
「お嬢様、こちらでしたか」
一人の女が、いつの間にか、斗真の背後に立っていた。




