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臨時バイト
「まさか、お前が来るとはなぁ」
「洗うべき皿がある場所に、俺はいる」
大きなホテルの厨房の、流し台。
そこに並び、喜一と弓徒は、皿を洗っている。
二人が立つ流し台には、山のように皿が積まれているのだが、凄まじいスピードで、その山は切り崩されている。
そこに皿があれば、皿洗い師は存在する。
とはいえ、だ。
何故二人は、このような場所にいるのか?
その理由は、水戸である。
彼女は言った。
「おとんから有能な皿洗い師を貸してくれって言われてなぁ。突然で悪いけど、行ってくれんか? 喜一君」
「それが仕事ならば、行こう」
そうして喜一は実業家である水戸の父が主催したパーティーの皿洗いに行く事になった。
弓徒も、同じ理由で呼ばれている。
が、水戸が何も言わなかったので知らなかったのである。
「全く……お嬢も心配性だぜ。この程度、お前一人で充分だろ?」
「同じ言葉を返す」
二人は時折、どうでもいい会話を交えながら皿を洗っている。
何でも無い日常のワンシーンのような光景……だが、厨房にいる者達は息を呑んでいた。
これが皿洗い師の実力なのか、と。




