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準備
皿洗いに於いて最も重要なのは段取りである。
皿を洗う順番。と言い換えても良い。
皿を洗い、置く場所のスペース。
皿の数。
皿の汚れ具合。
洗剤の量。
スポンジの性質。
これ以外にも様々な要素を総合的に考え、皿を洗わなければならない。
故に、千歳喜一はキッチンに立ってからたっぷりと十秒間は時間を取る。
長身痩躯。
鋭い目つき。
濡れたような、艶のある黒い髪。
髪と同じく、服も黒いシャツと細身のパンツ。
黒一色の彼の中で唯一白いのは、左手に持っているスポンジのみ。
「……」
シンクは縦横どちらも四十センチ程度。
深さは二十センチ弱。
横には皿を置く為のラック。
シンクを埋め尽くす皿の数は、見える範囲で大小合わせて凡そ十五以上。
箸は十セット(二十本)。
コップは十。
それが、無秩序に重ねられている。
「……」
十秒後、喜一はスポンジに洗剤を染み込ませ、蛇口を捻って水を吸わせ、二度、三度と揉んだ。
きめ細やかな泡が立った。
準備は整った。
皿洗いが、始まる。




