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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第一章 everyday
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強引

「——ふっ」


短く呼気を吐き、喜一はスポンジを、鍋の底に滑らせた。


常人の舞の目には、それは、普通の皿洗いの光景に見えた。

なんともなしの、いつもの皿洗いの延長。

ただそれだけの、そんな風に見えた。


しかし、次の瞬間、彼女の瞳に映ったのは、想像とは全く異なる光景だった。


「えぇっ!?」


そこに見えたのは、焦げ目一つ無い、鍋の底であった。


ありえない事態に、彼女は己の目を疑った。


だが、喜一が腕を動かす度に、鍋の底にある焦げ目が消えているのは、まぎれもない現実の光景である。


「い、いったい、どうやって……?」


舞の呟きを聞いていないのか、喜一はただただ無言で、スポンジを動かしている。


この時、もしも、舞が喜一のすぐ隣にいたのなら、気付いたかもしれない。


異常に強張っている、喜一の右腕に。


それは、尋常では無い力を込めている証拠であった。


ただのスポンジを、ただの腕力で、金だわし以上の存在へと変貌させる。


これが皿洗い師の実力……否、これは皿洗い師の、その実力のほんの一端でしかない。


焦げは落ち、皿洗いは瞬く間に終了した。


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