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everyday(The New World)
その昔、人が皿を洗えぬ時代があったという。
二人の偉大なる皿洗い師の決闘。
それにより、皿は人の手を離れた……だが、その手に皿を取り戻したのもまた人の力によるものだった。
今、人は自らの手で皿を洗っている。
面倒だ。手が冷たい。あかぎれが……と小言を口にする者も多い。
その一方で、自らの手で皿を洗わずして皿のありがたみがわかるものか。と言う者も多い。
そもそも皿を洗えるのが普通だったのだから、元に戻っただけだ。という意見もある。
誰の言葉も正しい。
だから、皿を洗いたくない人、皿を洗えぬ人に代わって皿を洗う者がいる。
人々はその者達を「皿洗い師」と——畏敬を込めて呼んでいる。
皿洗い師は今日も皿を洗う。
人の為、自分の為、世界の為、宇宙の為——。
それぞれがそれぞれの胸に様々な想いを抱きながらも、根本にある想いは皆同じ。
そこに皿があるから、皿を洗うのだ。
「そんじゃあ喜一くん、皿洗いよろしく〜」
「ああ」
彼らは洗い続ける。
そこに皿がある限り。
この宇宙のどこかに、皿がある限り。
いつまでも、いつまでも……。
彼らは、皿を洗い続ける——。




