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三つ目の選択肢
一般的な焦げの落とし方は、激しく、荒々しく削るか、
優しく、丁寧に洗い落とすか。
この二つに絞られるであろう。
激しい方であれば、金だわしなどを用いる。
汚れは落ちるが、鍋が傷つく恐れがあるという点でリスキーではあるものの、時間は掛からず、効果も大きい。
一方で、通常のスポンジか、あるいはヘラ状のキッチン用具を用いて、優しく洗う方法もある。
この場合、鍋は傷つかないが、綺麗な状態にするまで、それなりの時間が必要となる。
どちらも、一長一短。
焦げの状態や、鍋の状態。
そのような、様々な状況を見極めて、どちらかを使い分ける必要がある。
……けれどもこれは、常人の場合は、である。
皿洗い師である喜一は、金だわしなど使わない。
彼にとって皿洗いとは、ただ汚れを落とすというだけの行為ではない。
皿を、新たに生まれ変わらせる。
そのような哲学を持っている喜一は、決して皿を傷つけたりしない。
故に彼は、通常のスポンジを用いる。
通常のスポンジで、
「ふ——」
焦げを、
「——っ!」
こそぎ落とすのだ。




