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無限の皿洗いを無限に続けるという事
「蛇を名乗る女の前で、自分は無限の時間の中で無限の修行をした」
静かに、喜一は語り始めた。
皿を洗う手は止めていない。
在膳もまた、手を止めずに聴いている。
「皿を洗った。ただひたすらに、皿を洗った。そこに、終わりは無かった」
「先刻、私達が目にした光景まで見たという事か?」
「いや、そこまでは見えなかった。自分だけでは、この世界の終わりまで見る事など出来なかった」
「……私と皿を洗う事で、私のレベルに追いついたという事か?」
「そうだ」
「私が貴様を成長させ」
「自分が貴方を成長させた」
「……私は互角の皿洗いをしていると感じていた……が、それは互いに高め合った結果そうなっていたという事か……」
無限の皿洗いを無限に続ける……それは究極に到達した皿洗い師が二人いなければ成立せず、故に在膳は喜一が修行を経て既に究極に至った者であると感じていたが、喜一をそこに導いたのは他でもない在膳自身であった……。
それを知り、この時在膳は初めて、小さく笑った。




