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終わりは無い
「聞こえたか?」
無限の世界の中で、千歳喜一が問いを発した。
「聴いた」
同じく無限の中に存在する在膳九龍は短く答えた。
永遠に続いている皿洗いの世界の中であるにも関わらず、宇宙に響いた歓喜の声は二人に届いていたのだ。
「理解したか?」
再び、喜一が問うた。
「……」
在膳は答えなかった。
この場に於いて「何を?」などと無粋な問いかけをする事は無意味である。
彼は全てを理解している。
だがそれ故に、彼は答えられなかった。
それ故に、喜一が言った。
「生きとし生けるものは、無など求めていない」
「……」
「在膳九龍……貴方がどれ程無を求めても、全てが無くなるなどという事はない」
「……」
「終わりは訪れない」
「……」
洗えないはずの皿を洗う者が現れただけで、そのように論理が飛躍するはずがない——という反論も無い。
全てが最適化していった先に無があるはずだった……なのに、その最適化を自らの手で打ち破る者が現れたのだ。
それが何を意味するか——。
「終わりは無い、という事か」
それを理解出来ぬ在膳では無かった。




