皿洗いを止めない
在膳は、喜一の後を追うという事実に対して、特別な感情を抱いていない。
目が覚めるような屈辱。
ありえない事象。
馬鹿な。
まさか私よりも実力が上だとでもいうのか。
こんなはずが……。
この状況に対して、思い浮かぶであろう言葉は多々ある。
実際、在膳は驚愕した。
しかし、そこで終わりであった。
ならば自分もそのステージへと行く。
そう思った。
後塵を拝する事に対して何か思うのは、無意味な事であると彼は知っている。
それがそうであるのならば、そうするだけである。
思考に乱れはない。
全ての人々が望む無を齎す事。
それが自身の役目……。
在膳はそう信じている。
そして、生活に皿を用いるような知的生命体が存在するのであれば、それは地球人類と同じく無を求めるはずであると感じている。
それは事実その通りであった。
生命体と言葉を交わしたわけではない。
だが在膳にはわかる。
汚れた皿。
そこに付着している残留思念。
触れた指、スポンジから流れてくる想い……。
成長する文明が向かう先の光景……。
故に在膳は皿洗いを止めない。
一方で、喜一もまた、皿洗いを止めない。




