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粋では無い
「どっこいしょーいちっとアル」
湖岸に腰を下ろして、蛇は一息吐いた。
長い時が過ぎていた——無論それは現実の時間ではないが、精神にはその流れた時間の疲労が蓄積されている。
それが一体どれだけの時間だったのか……。
もはや時間という概念では推し量る事の出来ない領域——ビックバンの起こる前、何もかもが存在しないが故に時の概念すら存在しなかった時代と同様に、それについて考えるのは全くの無意味と言えるような領域——。
それはきっとそういうものではないか……。
とはいえ、表情は憔悴しているという程でもなく、適度なスポーツをした後といった風な爽やかささえ見られる。
「正直、二対一でやった方がいいかもしれなかったアルけど……」
協会のルールに二対一の決闘は無い。
しかし、これは世界の明日が懸かった決闘なのだから、ルールなど無用。明日を夢見る者として持てる手札を全て駆使して戦って然るべきである——と合理的に考えればそう思うのだが……。
「それは無粋というネ」
粋では無い。
一人の皿洗い師として、蛇はそう思うのだ。




