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過去は何の意味も持たない
脅威の芽は速やかに摘んできた。
敵対組織は嬉々として潰した。
野良の相手にも容赦はしなかった。
そうして勝ち続けた結果、協会は大きくなった。
群雄割拠した皿洗いの場という密林の中で、協会は覇者である虎となった。
虎を襲う生き物はいない。
故に強者は栄えた。
しかし、敵がいなくなったわけではない。
虎を襲う生き物は、虎より強い生き物しかいない。となると、敵となるのは同じに群れに生きる若い虎である。
老いた虎は息絶えるか、戦いの果てに群れを追われるか、自ら潔く一線を引くか……。
唐馬は自らの意志で一線から退いた。
老兵はただ去りゆくのみ……そう考えたのは、単に歳を取ったからなのか、戦えば負けると悟ったからか……。
どちらにせよ、もはや過去は何の意味も持たない。
あの時戦っていれば……あるいは勝つ目があったのではないか……という後悔すらも、現在では無意味な過程でしかない。
「私の負けだ」
スポンジが力なくシンクに落ちた。
流れる水が勢いを失い、止まった。
洗剤のボトルが倒れ、中身が、残りの水と共に排水溝へと吸い込まれていった……。




