145/184
海神の槍
海神の槍。
この言葉——海神——から連想されるのは、大いなる海の神、ポセイドン。
その神が手に持つ槍が三又であるというのは、神話に精通していなくとも自然と連想されるものであろう。
唐馬歩の誇る『海神の槍』もまた、研ぎ澄まされた三つの穂先から構成されている。
一つは、スポンジである。
弘法筆を選ばずという諺に則り、それがどのようなスポンジであろうとも秘儀を露わにする真理への鍵と化す。
次の一つは、洗剤である。
これもまたどのようなものでも構わない。例えがそれが百円均一のものであろうとも、卓越した技巧が軽々と限界を突破させ、それは常とは全く異なる泡を形成する。
最後の一つは、水である。
水道からごく当たり前に流れ出るそれも、彼の手に掛かればあらゆる穢れを拭い去る必殺の武器へと昇華される。水は変幻自在なのだ。鉄を裂き、岩をも穿つ水に彼の実力が加えられれば、必殺という領域へと踏み込むのも何ら不思議ではない。
これが『海神の槍』。
これを駆使した皿洗いで、唐馬歩は天下を取った。
そして、今、再びその力は天に比肩している。




