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理解不能な天秤
正直なところ、蛇にはよくわからなかった。
彼女自身も皿洗い師——それも協会に所属し、十二支の一人に名を連ねる超越的な皿洗い師——であるからして、自身の仕事が皿を洗う事であるという事を深く理解している——その理解度は深淵に及ぶものである——のだが、それとこれとは話しが違うのではないかと思っていた。
世界を救うという行為と、皿洗いという行為。
それは天秤に乗せるまでもない。
と、彼女は考えている。
救えないなら救えない。
救えるなら救う。
それでいいではないか?
何故そこに「救えるか救えないかわからないが、それが皿洗いであるのであれば受ける」——という選択肢が出現するのか。
一つの世界と、一つの皿。
それは果たして天秤に乗せるべきなのか?
そのような思考は正しいのか?
蛇にはわからなかった。
わからなかったが、依頼した。
「在膳九龍を——……在膳九龍と、皿を洗ってくれないアルか?」
「そこに皿があるならば、洗おう」
喜一は受けた。
世界など関係なく——。
それが皿洗いであるが故に——。




