宇宙の摂理
「わからないから、何もしないアルか?」
問われ、喜一は思考した。
何もしない——逆説的に考えれば、何かをするという事は世界を救うという事に他ならない。
ならば何もしないのであれば、それは世界の滅びを意味する。
無論、これは今の世界の滅びである。
先に述べたように、破壊と創造は表裏一体である。
終われば、始まる。
新たなる宇宙が……。
喜一は、皿洗いとはそういうものだと考えている。
汚れた皿を洗い、新品以上の状態にする。
小さな輪廻転生。
廻る宇宙の摂理。
皿洗いとはそういうものであり、それを行うのが皿洗い師である、と。
ならば、起こるというビックバンを止めないのが、皿洗い師としての正しい行為なのではないか——?
そういう考えがある。
それに向かって「違う!」と叫ぶ心の声は、聞こえない。
むしろ、新たに始まる宇宙が、これまでのモノよりも良くなるのであれば、それでいいとさえ思える。
「滅びを止める気はないアルか?」
心を読んでか、蛇が言った。
「わからない」
再び、喜一は答えた。
「……そうアルか」
瞬間、目の前から蛇の姿が消えた。
喜一は一人、湖の上に残された。




