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尽くす道
犬飼ブラウンは生来目が見えない。
盲目の皿洗い師である。
故に、目以外でモノを「観る」事に長けている。
空気の流れを「観て」飛来する砂が付着せぬよう自らの作った気流で皿を守る事など、彼らからしてみれば普段の皿洗いと特段変わらぬ事である。
しかし、彼は何故このような地で皿を洗っているのか?
世界皿洗い協会の中でも高い位置にいる彼であるならば、このような荒れ果てた地ではなく、より環境も設備も整ったところにて皿を洗う事が出来る。
皿は世界中のどこにでもある。
ここよりももっと住みやすい場所へ行った方が楽ではないか——。
事実、十二支には煌びやかな仕事をしている者も多い。
——だが、彼はそれを望まなかった。
「皿を洗えぬ人の為に、自分が皿を洗う」
そうした信念に基づき、彼はここで皿を洗っているのである。
目が見えぬからこそ多くの人に助けられてきた彼は、だから、人の為に尽くす道を選んだのである。
そして今、彼は洗い終えた皿を清潔な布に包んだ。
その時——であった。
彼の研ぎ澄まされた感覚が、異変を知覚したのは。




