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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第三章 battle study・紅
115/184

決着

 突然だった。

 前触れなどなかった。

 弓徒がスポンジから手を離した。

 そして、言った。


「俺の負けだ」


 彼は力尽きていた。


「もう体力も気力もねぇ」

 

 膝を付いた。

 とうの昔に限界を超えていた。

 しかし、何も言わずに倒れる事はよしとしなかった。

 彼にもプライドがある。

 皿洗い師としての。

 リベンジを誓った相手でも、何クソとがむしゃらに突っかからず、その力量を称えて終わる。


「……」


 視界が暗くなる。

 よくやった……とは思わない。

 負けたのだ。

 敗北感……けれどそれはかつて味わったものとは違う。

 今は、力量差がわかる。

 かつては一方的に屠られた。

 けれど今は、背が見えている。

 師匠から教わった皿洗いが、新たなる道を示してくれた。


「今回は、俺の負けだ」


 言葉を強調する。


「次は、俺が勝つ」

 

 この道を進み、強くなる。

 復讐ではなく、一人の皿洗い師として、高みを目指す。

 その決意に応えるかのように、


「ん」


「……?」


 声の方。上げた視線の先に、手があった。


「いい勝負だったよ。またやろーよ」


 尖った爪。

 それはもう恐れるものではない。


「ま、次もあたしが勝つだろーけど」


「抜かせ」


 弓徒はその手を強く握り返し、そして、意識を失った。


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