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ラストスパート
打って変わって逆転した戦法。
激しく筋肉を律動させ皿を洗う弓徒。
静かに淡々と行儀よく洗う虎子。
幾百幾千の皿が次々と決闘の場に運び込まれ、シンクに流し込まれるも、次の瞬間には洗われ、汚れはいわんや一滴の水分すら残さずに美しく磨かれて、ラックに鎮座させられる。
その様はマラソンのラストスパートのようだった。
激動。
命を燃やし尽くすかの如き洗浄。
観客は固唾を飲んで二人の勝負の行方を見守っていた。
自然、腕に力が入る。
応援の声を上げる者もいた。
ドラの音が響く。
太鼓が叩かれる。
手拍子も。
誰も彼もがハイボルテージに到達していた。
唐馬と喜一ですら、握った拳に力が籠もっていた。
ここで決まる。
弓徒が押し切るか。
虎子が自身を律し続けるか。
気がせめぎ合っている。
爆発寸前の風船の如き脆さで。
ここにきて、二人は互角であった。
いや、そのような状況を弓徒が作り出したのだ。
このままいけば、あるいは……。
唐馬ですら、そう思った。
——その時、だった。
不意なる終わりが訪れたのは。




