一つの可能性
長い時が流れた。
会場を後にする者もいる。
一度帰ってまた戻ってくる者もいる。
客席に座り続けている者も。
会場に設置されたカメラと熱心な観客のみが、二人の決闘を追い続けている。
当の本人達は、周囲の状況を全く気にしていない。
ひたすらに、皿を洗っている。
もはや近隣の飲食店の皿は全て洗われ、住宅街でも終わらず、他県のものも洗っている。
通常の皿洗い師は三日三晩皿を洗えるというが……。
洗う量が尋常ではない。
通常の決闘を遥かに凌駕している。
それでもまだ余力を残しているように感じさせるのは流石十二支の一人である。
そして意外なのは、それに弓徒が食らいついている事である。
「まさか、これ程とは……」
唐馬が唸った。
弓徒の実力は正確に把握していると思っていた。
故に、虎子にはまだ及ばないと。
しかし、現実は逼迫している。
予想外であった。
「一体、彼は誰に何を教わったのか……」
禹歩だけではない。とすると、あの気か?
発し続けている気。
それはどこから来ている?
人間は生きている限り気を発しているが、こうも放出し続けて底を尽かないはずがない。
だとすると……
「まさか、この術は……」
一つの可能性に、思い当たった。




