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彼と、彼らの違い
「やれやれ……だから近付き過ぎるな言うたんよ……」
呆れた顔をしながらも水戸は舞の両脇に手を刺し込み、そのまま元いた場所まで引き摺った。
このままあそこに座り込んでいると喜一の邪魔になるかもしれないと思ったからだ。
「すまない、水戸」
喜一は振り向かずに礼を言った。
「いいって。むしろ、礼を言うのはこっちやわ」
「ううっ……ひっぐ……」
斗真は微笑み、泣きじゃくる舞の髪を撫でた。
涙を流すその理由、彼女は痛い程に理解している。
斗真の家庭は上流階級、所謂セレブであり、彼女は幼い頃から雇われの皿洗い師を何人も見て来た。
彼女からすれば、彼らは本当に皿を洗う機械のような存在だった。
一体何が楽しくてそんな事をしているのか?と問うと、
これが自分の役目だから、としか答えなかった彼ら。
斗真は、自分の意志を持たない皿洗い師を不気味だとして嫌悪していた。
しかし……この街で出会った喜一は違った。
斗真はその時の事を思い返した。




