まだ、まだ
いつまでこんな事をしているのか。
こんな事を続けて意味はあるのか。
無論、ある。
皿を洗う。
皿が綺麗になる。
飲食店が楽を出来る。
飲食店が終われば次は家庭だ。
様々な人が楽を出来る。
意味はある。
皿を洗う事は人を幸せにするという事だ。
しかしこの決闘は復讐から始まった。
幸せとは逆だ。
しかし今はその復讐心を捨てて皿を洗っている。
だが……
思考の堂々巡りだ。
悪い兆候だ。
同じことを考えてしまうのは。
では他に何を考える?
考えないでいるのは難しい。
ならば考えを気に留めなければいいだけだ。
思い浮かぶだけに任せる。
この皿洗いは何の為だ?
インドの事を忘れたのか?
あの時の恐怖、敗北。劣等感。
それを払拭する為に己を鍛えた。
これはその総決算だ。
敵を倒す。
しかしそれは皿洗いの本質とは異なる。
敵などいない。
皿があるだけだ。
敵……いや、相手はどうだ?
もう凄い数の皿を洗っている。
見なくても気配でわかる。手に取るように。
食器、水の音。泡のきめ細やかさ。紅虎爪の放つ強烈な衝撃音。
全てが感じ取れる。
感じ取れるから……まだ、大丈夫だ。
俺はまだ、負けちゃいない。




