空の内心
心を乱さずに皿を洗う事は不可能ではない。
けれど、いつまでも続けられるとは限らない。
目まぐるしく目が動く。
汚れを視認。解析。最適な洗い方を選択。実行。終了。次に移行。
ここまでは皿洗い学校で習った事だ。
ここに禹歩を取り入れている。
ワンステップにワンアクション。
洗う。
気を放つ。
洗う。
気を放つ。
洗う。
気を放つ……。
最中、視線が相手に行く。
疾い。
凄まじい速度だ。
技量は己よりも遥か上。
凄い。
でも、自分だって負けちゃいない。
速度では負けているが、丁寧さでは勝っている……(はずだ)。
互角ではないが、互角。
それにしても、凄い。
しつこい汚れがあんな簡単に落ちていくとは。
あれが紅虎爪。
かつて俺の頬を抉った技。
頬……傷……。
ああ、そうだ。
俺はそれの恨みを晴らす為に戦っていたのだった。
忘れていた。
いや、忘れなければならない。
それは勝負の切っ掛けでしかない。
本質には関係ない。
皿洗いの腕前を競っているのだから、そういう感情は邪魔だ。
皿を洗え……。
一心不乱に、皿を……。
何も考えずに……。
空の心で……。




