頑張れ
説明を聞いて「なるほど〜弓徒も大したもんやねぇ」と頷く当麻。
彼女はこの決闘が行われた経緯を知らない。
弓徒の中にどのような想いが渦巻いているかなど。
無論それは喜一も知らないが、これが世界皿洗い協会の単なるパフォーマンスではなく、一人の男の全てを懸けた戦いである事は理解している。
故に、喜一には、まだ。という言葉が引っかかった。
紅虎爪により頑固な汚れを瞬殺する虎子。
術を駆使して皿の美しさを引き上げている弓徒。
一人の観客としての心境で見れば、互角。
いや、むしろ十二支相手に健闘している分、現時点では弓徒の方が優勢であるようにすら感じる——とはいえ、それはあくまで相対的な価値観に過ぎない。
絶対で考えれば、これは……。
「……」
喜一の握りしめた拳に力が籠もった。
不意に湧き上がった感情。
負けるな。とでも言うつもりか?
そんな事、本人が一番わかっているだろうに。
戦士に掛ける言葉など、無い……。
「おらー! 弓徒! ペース落ちてんぞー! もっと頑張らんかー!」
そう思った矢先、隣の当麻が叫んでいた。
頑張れ、と。
「……頑張れ」
つられて喜一も、小さく呟いていた。




