禹歩
両足を揃えた状態から、僅かに、左足を前に出す。
一泊置いて、右足を左足よりも前に出す。
また一泊置いて、左足を引きつけ、右足と同じ位置に揃える。
一呼吸置いて、次は右足から。動きは最初と同じだ。
本来ならば殆ど動く必要のない皿洗い場で、そのような動きを繰り返している弓徒。
既に皿を洗う速度で負けているのに、無駄を増やしてどうするのか——などと、見ている側は思わない。
何故か?
答えは、弓徒の奇妙な足捌きよりも皿に目がいっているからである。
「おぉ……」
客席から、溜息が漏れている。
明らかに、綺麗なのである。
普通の皿を知っている者が見て「皿ってこんなに綺麗だったっけ?」と思うほどに。
美しく洗われている。
紅虎子の皿よりも。
「なるほど。そうきたか」
歩法と皿。二つを見比べて唐馬は驚きのため息を漏らした。
「どういう事ですか?」
喜一が尋ねた。
彼にはわからない。
二つの要素の関連性が。
「なんか不思議やねぇ」
当麻にもわかっていない。
「わからなくとも無理はない。あれは禹歩だよ」
「禹歩……あれが……」
「ウホ?」
「兎歩だよ。それも、特別なね」
二人に向けて、唐馬が説明を始めた。




