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流し台という名の
「——!?」
そこは戦場だった。
泡飛沫が飛び、水が流れ、落とされた汚れが排水溝へと消えていく。
いくつもの皿が瞬く間にラックへと導かれ、荘厳な建造物へと姿を変える。
自分達が汚してしまった皿が、喜一の手により、まるで生まれ変わったかのような……いや、まさしく新生したとしか言いようの無い程に、生まれたての美しさを取り戻していく。
輪廻転生。
生きとし生けるもの、その全てが持つ魂のサイクル。
人生と言う名の、生きる為の戦いの場の縮図が——そこにあった。
「あ……あ……」
口元を覆い、嗚咽と共に涙した舞は、その場に座り込んだ。
肩が……いや、全身が震えている。目からは止めどなく涙が溢れる。
恐怖ではない。
感動だ。
赤子が生まれた瞬間に涙を流すのと同じく、舞は今ここで自分が再び生まれた事を実感した。
極限まで磨き上げられた皿が放つ、純粋な魂の輝きによって、舞の心が洗われたのだ。
「……しゅ……しゅごぃぃ……」
言葉にならない、震える魂の発した音が、口から出た。
次元が違う。
皿を洗う、という事の。
舞はそれを魂で感じ取ったのだった。




