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大二病棟へようこそ!  作者: 兼坂 真白
つまらない小説の主人公は大体思弁的かつ表層的な物言いしかしない
2/6

このくだらない大学生活に衝撃を!①

「・・・えー、だからして、今回のアメリカにおける大統領選挙は大方の予測と全く反した結果となった。それを社会学的分析によって検討すると・・・」

いつも疑問に思うことがある。なぜ、大学の教授というのは座ったまま講義を行うことが出来るんだろう。理由がわかるやつがいたら教えてほしい。あの格好で一時間半しゃべるとか逆に苦痛だろ、とか思いながら、世界的に大きな話題となった世界的に大きな選挙の結果を世界的に最も優秀な学者たちの分析をなぞる形で世界的に最も権威ある(風な)口調で話している老教授の目線を確かめつつ、俺は卓上電源で充電中のスマホの起動ボタンを押す。ちょうど正午だ。授業終了まであと10分である。そしてその残りの10分が限りなく長いことも、俺は知っている。


ところで、「ライン」というスマートフォンアプリをご存じだろうか。


いうまでもなく、「ライン」とは日本中を席巻し、いまやあれなしにはコミュニケーションをとることもできないといわんばかりの普及率を誇るソーシャルネットワークサービス(SNS)のことである。それは主に若者世代にインフルエンザの100倍近くの感染度で広まり、それに感化された(というか「お母さん、ラインじゃないと連絡めんどくさいんだからラインスマホに入れておいてよ」「しょうがないわねえ」「お、じゃあお父さんも入れておこうかな」「お父さんはいれなくていいよ」「・・・」という会話が全家庭で行われたものと思われる)親世代に普及し、その真っただ中にいる大学生にとってはもはや三種の神器(他の二種類は読者の想像に委ねられたい)といっても過言ではない代物だ。


なぜこんな話を延々と語っているかというと、そこにはまっとうな理由がある。

俺はこのアプリが心底嫌いなのだ。なぜかって?当り前さ、コミュニケーションが簡単になりすぎたんだ。まったくこれのせいで、最初はえらい苦労を強いられた。

絶え間なく表示される通知。誰かと思えば3日前に語学のクラスで一緒になったやつからの「よっす~」という暗号解読班もこればかりは解読できないであろう謎の暗号ときたもんだ。こんなんで会話が成立すると思っているのだろうか。その後も絶え間ない通知に嫌気がさし返信をしなくなってしまった俺のラインは、いまやその右肩に赤い丸を付けることかなわず、ホーム画面で一点の濁りなき御姿をさらしている。


と、くだらない話をしている間に授業が終わったようだ、

「よし、じゃあ今日はここまで。明日は今回の選挙について合理的選択モデルでの読解を試みようと思う」

ときた。来週もか。合理的選択モデルを選択するのならまず授業を行わないという合理的な選択をしてみてはどうだろうか。


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