明けない夜はない・・ではなく、ようやく明けるのです!
ようやく魔物との戦闘とシオン達の宴会のギャップが終わります。
城壁都市内部で、城門の補強と入口付近のバリケードを何重にも設置している時、ようやく真夜中の闇和らいできた。そう、夜明けが来たのだ。闇は人の心を弱くする。暗闇で視界が悪く、魔物が何処から襲って来るのか分からない状態は人々に不安と過度なストレスを与えていた。
しかしその闇が今、取り払われたのだ。それは生き延びた人々に、勇気と希望を与えた。
「うおぉぉぉぉ!!!!夜が明けたぞ!!!!」
「生き延びたんだ!!!!」
「魔物が良く見える!奇襲が丸見えだぜ!」
「明るければもっと戦える!」
城塞都市を守る帝国軍と冒険者達は、疲れていたが気力は高まったのだった。
「魔物が動き出すまでは見張り以外は少しでも休んで体力を回復させろ!戦いはこれからだぞ!」
ギルド長が見廻り、兵に休むよう指示を出す。そして、その間魔物がまったく動いていない訳ではなく、スライムやゴブリンといった小型の魔物が今も城門を破壊しようと、城門に武器を叩き付けている。しかし、非力なゴブリンでは傷を付けるのが関の山であった。現在は監視のみで大型の魔物が動くまで待機状態であった。
ここで、嬉しい誤算があった。魔物が距離を取ったまま動かなかったのだ。これには冒険者も不思議だったのだが訳があった。魔物は基本的に夜行性が多い。そして、魔の森にいる魔物は昼間でも暗く夜のような場所だったため、初めて明るい太陽の下に出てきた魔物が多かったのだ。眩しい太陽の陽射しはダメージこそ無いが、魔物の体力を酷く奪ったのだ。魔物も多少の知能がある。暗くなるまで待とうというくらいには・・・そしてナーガように人間並の知能を持った魔物もいたのだ。
「ふふふ・・・面白い魔法を使う者が居たものじゃ。人間では無い者・・精霊王が甦ったのじゃな。100年前の決着を着けようぞ!」
このナーガは100年前に、人間と精霊に戦いを挑み生き残った強者であった。誘導魔法などまったく効かなかったが、この魔法が人間が使った物ではないと気付き一族を連れてやって来たのだ。そして1番の後方にて、戦闘の様子を見守っていたのだった。
「どこにいるのじゃ?まだあの街にいるのかのぅ?久々の戦じゃ。たっぷり楽しませてもらうぞぇ」
ナーガは城門の破壊に手こずっている魔物達を見守りながら、配下の魔物に指示を出したのだった。
「お前達!城門を破壊してくるのじゃ。城門だけで良い。後は、低脳な大型魔物に任せて戻ってくるのじゃぞ?」
ナーガの指示に、ラミア達は行動に移したのだった。
!?
日が完全に登った頃、大声で緊急の伝令が響いた!
「大変です!多数のラミアが接近してきます!」
すぐさま、城壁に兵が集まり城門の入口にも防衛のため兵が集まった。
「おいおい!ラミアは昨夜は襲って来なかったよな!?夜行性じゃないのかよ!」
「知るか!しかしラミアってどんな攻撃をするんだ?城門を破壊出来ると思えないんだが?」
馬鹿力を持つミノタウロスならともかく、相手を絞め殺すラミアに城門が破壊出来ると思わなかった。
「ギルド長!ラミアが城門手前で止まりました!」
少し距離のある所で、ラミア達は整列した。ただ止まったのではなく、整列して待機したのだ。魔物では考えられない行動だった。
「ば、ばかな!整列している!?魔物が?」
この行動に冒険者達が1番驚いた。こんな組織だった行動を魔物が出来る訳がないと思っていたからだ。そして、その後のラミアの動きに注力した。
「ラミアが何をしようとしているのか、注意しろ!」
その言葉に誰もがしたがった!
ラミアはチチ丸出しだったからではない・・・と、思いたい。
整列したラミア達は、リーダーと思われる少し色の違うラミアが何か叫んだのち行動を開始した。それはー
「まずい!詠唱に入っただと!?」
魔物でも魔法を扱う事の出来る者はいる。ラミアは火属性の魔法が全体的に得意で、ブレスも吐ける。しかし組織だって詠唱し、敵に放つ事の出来る魔物など聞いたことがない。
「・・・上位種ナーガの仕業か!?」
神として崇められるナーガなら考えられない事はないと結論付けたが、状況をどうすることも出来ないのだ。
ラミア達の魔力が増大し、周りに炎が巻き起こる。昨夜の、炎の竜巻の縮小版のようだった。
ラミアが吠えたのち、一斉に火の魔法が放たれ、奇しくも複合魔法となって城門にぶるかる!ラミアの放った火の魔法は融合し、一段階上の炎の魔法になり、更にもう一段階上の爆炎の魔法になってぶつかった!
ドッゴーーーン!!!!
パラパラ・・
ラミアの爆炎の魔法がぶつかった城門は、無惨にも破壊され城門の半分が通れるようになっていた。
遂に、城塞都市を守る鉄壁の扉が壊されたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃シオンは─
「ジークの精霊眼は精霊が見えるの?」
シオンの問い掛けジークは答える
「そうだね。ときどき見える事があって、僕の周りを廻りながら去っていったりしたね」
へぇ~、スイレンを除けばひかりさん以外の精霊なんて見たことないからね。他の地域でも少しずつ精霊が復活しているみたいで嬉しいな♪
「精霊眼は、魂が綺麗な者に現れる現象で精霊が見えると言うより精霊に好かれやすいので、精霊が集まってくるのよね」
ひかりさんの言葉にアルフさんが驚く!
「精霊眼の事をご存知何ですか!?王位継承権の精霊眼は知っていても、詳しい効力に付いてはほとんど知られていないはずですが・・?」
知ってる何も・・・
「知ってるも何も・・・ひかりさんは精霊ですよ?こちらのスイレンも精霊ですし?」
「こらシオン!何で疑問系なのじゃ!」
スイレンの抗議はスルーした。
「「はっ!?」」
うむ!親子だね!声がハモったよ☆
「貴方なら知っているのではないですか?フィリアス領で精霊に愛されし少女の話を」
「ま、まさか!フィリアス公爵家の長女が龍襲撃の時に光の精霊王様と契約して、撃退したと言うのは・・・!?」
アルフさんは震えながら指をさす。
「そうです。シオンが、光の精霊王ひかりさんと契約して、なんとかなったのです」
「なぜ!フィリアス公爵の子供が帝国にいるんだ!状況がわかっているのか!?もし、帝国の王宮どもに知られたらどうなるか!」
少し興奮した様子でアルフさんが怒鳴る。わかっているよ。(泣)帰りたくても帰れないのよ~
アルフさんに、私達の事をかいつまんで話した。無論、誘導魔法の事は秘密でね!
こうして夜も遅くなって私がねむねむしてきたので、明日の朝にもう一度詳しく話をすることでお開きになりました。
ようやく夜が明けるのでした。
シオン
「援軍は間に合うのかしら?」
愚者の声
「どうなんでしょう?」
シオン
「城塞都市のピンチに颯爽と現れる正義の味方!カッコ良くない?」
愚者の声
「自分でやっておきながらなんてマッチポンプな!」
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