帝国も頑張っているのです!
タイトルを変更しようか考え中です。
だってヒロインでて来ないもん・・・
幸いにも魔物達は近道を横断して東の森へと向かっていたのだ。故に冒険者パーティーを追っては行かなかった。
しかし、その事を冒険者パーティーがわかるはずも無く、命からがら城塞都市に知らせに走ったのだった。そう、数時間後には本当の事になるのだから。
近道から魔の森を抜けて、大急ぎで戻った【堅実の森】パーティーは門の入口で衛兵に魔の森の話をした。
「そんなバカな!スタンピードだと!?」
話を聞いた門番の衛兵も信じられなかった。しかし、実績のある冒険者パーティーの言う事も無視出来ず、現在1番位の高い上官に確認を取る事になった。そして幸いにも現在、街の衛兵又は帝国軍を預かる大隊長副官はできる人物だった。
大隊長は貴族出の無能で、王国との小競り合いで戦果を上げようと勇み足で出兵していった。無能故におだてれば良いように操れるので、実質的にこの副官が街の治安及び魔物の対応をしているのは周知の事実だった。帝国軍大隊長副官イルベルトは衛兵からの報告を聞くと、すぐに現在城塞都市にいる兵として戦える者を集めて武器の準備をするように指示を出し、報告した冒険者達の元へ急いだ。
「君達だな!スタンピードの報告をしたのは?」
【堅実の森】パーティーは少しして帝国軍の現トップが直接来たことに驚くが、それだけの事だとすぐに思い直す。
「はい!そうです!衛兵から魔の森の調査の依頼を受けて向かった所で、魔物の大群を見付けました!」
「君達の事は知っている。この城塞都市で活動しているベテラン冒険者だな。ただ信用していない訳ではないが、内容が内容だ。証拠が欲しい!後で間違いでしたとは言えないのでな・・」
【堅実の森】はお互いに顔を見渡す。証拠など持ってないのだ。
「すみません。証拠と言っても何も持っていないのですが・・・?」
「なに、簡単だ。冒険者ギルドへ行くぞ!依頼を受けていたのだろう?依頼報告すれば嘘かどうかわかる」
【堅実の森】パーティーは納得した顔で副官の後を付いて行く
冒険者は冒険者ギルドの登録時に、自分の血液を特殊な水晶体に垂らして個人情報を登録して、冒険者カードを発行する。依頼達成時には冒険者カードを受付嬢に渡して、カードを特殊な魔法の装置に通す事により、達成したのか失敗したのか判別する。実はかなり良くできた装置で、依頼達成が嘘か本当かどうか本人が見た情報から判別出来るようになっている。
故に、森の異変の調査でスタンピードの話しが嘘かどうかもわかるのだ。
冒険者ギルドに着くと、すぐに受付嬢に依頼達成の確認をした。無論、【達成】と表示されている。
イルベルト副官はすぐにギルド長を呼び、2階にあるギルド長室で【堅実の森】パーティーを交えて緊急会議を開いた。
「まさかスタンピードが発生するとは・・・」
「すでに、セフィリト王国国境に展開している部隊に火急の早馬を走らせました。無能な貴族の私設軍が多いですが、トップの司令官は有能な方です。即座に援軍を送ってくれるでしょう・・・」
イルベルト副官が最後の方の言葉が小さくなった事に違和感を覚えたギルド長は聞き返す
「どうかなさいましたかな?」
「早馬が向こうに着いて、すぐに援軍をこちらに送ってくれたとしても到着は2日後になるでしょう」
!?
早馬で半日の距離であり、しかもほとんど休まずに走った場合である。この世界では遠距離の連絡方法は限られており、どうしても情報が遅れるのだ。もし、国境に展開している軍が援軍に移動をしてきたとしても徒歩になり、重たい鎧兜と武器を持っての進軍となるため2日は掛かるだろう。ただで大人数での移動は時間が掛かるのだから。
このまま魔物達が押し寄せて来ても2日は持たせないといけないのだ。・・・少ない手勢で。
「魔物がすぐにここに攻めてくるとは限らないでしょう?すぐに騎馬を扱える小隊を魔の森付近に向かわせ、魔物が出てくるか見張らせます」
「そうだな、ではそのように手配してすぐに街の者に緊急発令を実施しよう。まだ魔物が出て来ていないのであれば、北の方に逃げれば助かる可能性が高まるだろう」
その言葉に冒険者パーティー達は顔をしかめたのだった。冒険者達の表情に質問をする副官
「どうしたのだ?何か気になる事があれば言ってくれ。非常事態だ!」
軍のトップに発言するには勇気が必要だったが、それでもベテラン故に疑問を投げ掛ける
「多分、街の人々に避難しろと言っても殆んど避難しないと思います」
その言葉にギルド長とイルベルトが何故?と不思議に思う。魔物の大群が攻めてくる可能性が高く、今なら逃げられるのに逃げないと言うのだ。
「何故だ!?」
「逃げた後が無いからです。冒険者としての考えになりますが、別の街に逃げたとしてどうなりますか?」
「逃げた後・・・だと?」
「そうです。ただでさえ食糧の高騰で食べ物が少ない時期に、住む場所を離れて暮らしていけますか?」
その言葉にイルベルトが反論するが・・・
「それは・・・保護してもらう街の町長か、領主の援助で食い繋げられるだろう?」
「ただでさえ自分達の食い扶持でギリギリの所で、難民を援助出来るとは思えません。更に言えばこの原因を作っている、中央も信用出来ません。民はバカでは無いですよ?食糧の高騰が、帝国が王国に喧嘩を売ったからだとみんな知っています」
!?
「そ、それは一部の馬鹿貴族の権力争いのせいで・・・」
「民には関係ありません。俺達は何とかなりなりますよ?森でオークなどを狩って、自分達の食糧は確保出来ますから。でも、もし援助して貰えてもいつまでですか?それまでに仕事を確保出来ますか?知らない街で。しかも魔物が去った後、街に戻れたとしても無惨に壊され、荒らされた街の復興にどれだけの時間と労働力が掛かるかわかりますか?」
冒険者達の言葉を聞いて青ざめるイルベルトとギルド長。命が助かれば良いというものではないのだと実感する。
「・・・一応、緊急発令を出して市民に選択を委ねよう」
イルベルトは自分の甘い考えに、重たい言葉を吐いたのだった。
愚者の声
「大変な事になった・・・」
シオン
「本当に・・・」
シオン・愚者の声
「「どうしよう!」」
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