土龍戦は始まったばかり
城塞都市に入り込んだワイバーンを退治している頃─
『グオォォォォォオオオオ!!!!』
「ちっ!?」
フィリアス騎士団と土龍が激戦を繰り広げていた。
「くはははは!やっと出て来たと思ったらこの程度かのぅ?」
土龍は尻尾を鞭の様にしならせ、騎士団達を吹き飛ばす。
「おっと!危ない危ない!」
「バカ!リーゼン!跳んでどする─!?」
他のメンバーが後ろに跳んで避けたのに対し、リーゼンだけは跳んで避けたのだ。
「後ろを向いたのは失敗だったな!」
リーゼンは土龍に登り、背中に乗っているタクシャカに斬りかかった!
ガギィーーーーン!!!!
リーゼンの刃が届く瞬間に、目に見えない【何か】に防がれたのだ。
「なっ!?」
「くっくっくっ!土龍では無く、妾を狙ってくる事は自明の理じゃろう?故に、何も対策しない訳ないじゃろうて?」
タクシャカの周りには結界が張られていたのだ。
「しかし、弓矢や魔法の対策だったのじゃがな?よくも土龍を恐れず乗ってきたものじゃ、誉めて使わすぞぇ」
「だったら死んでくれると嬉しいな!」
リーゼンは再度、斬りかかろうとしたがその前にタクシャカの魔法が放たれた。
「褒美じゃ!受け取れぃ!」
火炎弾が至近距離で放たれ、リーゼンはまともにぶち当たり炎に包まれながら土龍から落とされた。
「まずい!土龍に踏み潰される!サクラ!リーゼンを!エミリアとワシは土龍の注意を逸らすぞ!」
土龍騎士団長シールの適格な指示の下、土龍の注意を向けるために土龍に攻撃を仕掛ける。
「ふんっ!」
「はぁ!!」
ガギィン!
ガギン!
ギッン!!!
土龍を攻撃するも硬い岩肌に遮られ、石を斬っている音が響く!しかし、土龍も無視出来ない力強さがあるようでエミリアとシールに集中する。その間にサクラがリーゼンを引きずり離れる。怪我の確認は後だ。
「いだだだだ!もっと優しく引きずれ!」
引きずるのに優しくも何も無いのだが……元気そうである。その様子をタクシャカは横目で見ていた。
『まともに当たったはずじゃが?レジスト系の魔法か、それともあの鎧の装備のおかげかのぅ?なんにしても炎系の魔法は効かないようじゃ』
タクシャカはほとんどダメージの無かったリーゼンを見て瞬時に理解した。敵ながら流石である。
フィリアス騎士団との戦いは激化していく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
同じ頃、もう1体の土龍は城塞都市のすぐそばに近付いていた。
「土龍はもう目の前です!なぜ、まだ攻撃してはいけないのですか!?既に、投石機及びバリスタの射程範囲内ですよ!」
既に100メートルまで近付いてきた土龍に、攻撃開始の合図が降りないのだ。焦った兵士が上官に申告する。
「もう少し待て!もうじき罠に掛かる頃だ!」
そう言った矢先の事だった。
ドッコーーーーーン!!!!
土龍が落とし穴に落ちたのだ。いや、落ちては居ない!土龍に対して、用意してあった落とし穴は小さ過ぎて脚を取られ、横転したのだ。実は落とし穴の全てを土龍の大きさに掘るのは無理だった。ならば、わざと小さく深く作る事によって転ばせる作戦にしたのだ。亀と同じくこれだけの巨体、横転すると起き上がるまで時間が掛かる。すなわち─
「今だ!!!攻撃開始ーーーー!!!!」
待ってましたかと言うように、一斉に無数の石や石で出来た巨大な弓矢が土龍を襲う!投石機からはワイバーンの時は、無数の小型の石を放ったが土龍には効かないので、1つの大きな石を1台に1個飛ばす様に工夫した。しかも石は魔法で作れるため魔力があれば無限に作れて飛ばせる事と【かたち】も自由に作れるのだ。飛ばす石は栗ようなイガイガにして少しでもダメージを与える事の出来る様にしたのだ。
それでも土龍の硬い岩肌にはダメージが通らない。しかし、石の当たった箇所は鱗が削れ、下から柔らかい肌が出て来ている。バリスタの弓矢も一部刺さって土龍も痛さに吼える。
「グオォォォォオオオオ!!!!!」
城塞都市の土龍戦は始まったばかりだった。
シオン
「ウズウズ……」
愚者の声
「どうしたの?」
シオン
「出番を待っているのですわ!」
愚者の声
「ふっふっふ、出番があればいいねー?」
シオン
「なんですって?まさか!?」
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