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遠い記憶  作者: 椿 雅香
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お月見(ザ おばさんズ)

斉藤たちは、おばさん達のお月見に招待されます。

Ⅸ 秘密


 十五夜の晩、私と坂本は、第二世代のおばさんたちのお茶会に招待された。ススキを飾って、団子を食べるのだ。十五夜は口実で、本当は、私と坂本の人となりを見定めたかったようだ。


 第二世代のおばさん達は、みんな、配偶者や子供がいるせいだろうか、どの人も、おばさん然とした安定感があった。中には、若い頃、さぞかし美人だっただろうと、思われる人もいる。


 おばさん達は、交代で私達に近寄って、いろいろな質問を浴びせた。

圧巻は、香織や佐織の母の小坂耀子だ。私と坂本の隣に座って、プライバシーに関わることを含め、根ほり葉ほり訊いた。

 

 学部は?専攻は?将来、どんな職業に就こうと思ってるの?理系へ転学部する気はないの?等々。

 桃源郷に一宿一飯の恩義があるから、仕方がないのかも知れない。でも、これだけ、おばさん達にジロジロ見られ、あれこれ訊かれると、見せ物じゃない!と叫びたくなる。


 男達は、稲刈りの宴会や戦闘の祝勝会で、さりげなく話をしてきただけだった。あの時、暇だったのだから、訊きに来たら良かったのに。と、恨めしく思った。


 憮然として団子をほおばると、片山 翔の妻で律子、依子の母の真紀子が、側へ寄って来た。

「悪かったわね。小姑みたいでしょ。こんな小さな集落に住んでると、どの子も自分の子のように思えてね」

 香織から、この人は凛博士の親友だと聞いていた。よく見ると、いかにもお母さん然とした大柄なおばさんだ。

「凛、ユイがあなたのお世話になったって喜んでたけど、あなた、あの子のこと、どう思ってるの?」

「桃源郷の小野寺ファミリーだからって、近づくヤツがいるそうですね」

 片山真紀子が片方の眉を上げた。

「面白い子ですね。ネコを使って、意味のない実験をして、ストレスを発散してるみたいに見えます。まだ、十六だって聞いたけど、あの子の話すことは、十六のものじゃない」

「そうなの。あの子、天才なの」

「でも、可哀想な気もします」

「どうして?」

「ここに閉じこめられて、自由がない」

「あの子は、自分の判断でここにいるわ」

「でも、義務感からそう思ってるみたいです。学校に行きたいらしい」

「学校って?」

「友達作って、一緒に農作業したり、研究したり、誘拐されたりしたいらしいんです」

「……そう、そんなこと言ったの」

「どうして、誘拐なんかされたんですか?」

「翔が捕まってしまったの。翔の命が惜しかったら、投降しろって言われて。相手が、知ってる人だったから、そんなひどいことしないだろうって捕まることにしたの」

「知ってる人って?」

「香織のお父さん、小坂一平だったの」


 中村や小坂が桃源郷と敵対していたことは聞いていた。でも、小坂が、桃源郷のキーパースンとも言うべき、凛博士を誘拐していたことを知って、絶句した。


「楽しかった……んですか?」

「あの子が、そう言ったの?」

 真紀子が不思議そうに訊いた。

「そうね。楽しかったわ。結局、あの誘拐がきっかけで、第二桃源郷ができたんだもの」

 片山真紀子が、目を上げて言った。

「ユイが、そこまで心を許すなんて。あなたに、あっちの方を強要しないで欲しいって、陽一さんや慎二さんに頼んでたわ。ずいぶん、楽になったでしょ?」


 道理で。近頃は、女達の攻勢がなかったことに気が付いた。

「足が治るまで、楽しんでって。ユイが喜ぶわ」

 意味深に笑って、向こうへ行った。


 真紀子が一同に頷くと、他のおばさん達は、特段、話しかけて来なくなった。おばさん達の中では、水野裕美と片山真紀子が、リーダーシップをとっているようで、この二人が認めたからだろう。

 縁側の向こうで、凛博士が片山真紀子とじゃれ合って、まるで高校生に戻ったみたいだ。

 ユイがしたいのは、これだ。そう思った。



 香織は、毎晩八畳間にやってくる。坂本は、完全に新婚状態だ。

 私の寝室は、病室になった。毎日、消毒薬の臭いに包まれて眠るのだ。甘い香りがしなくなった。クチナシはとっくに終わっていた。


 病室で寝る私を気の毒に思ってくれるのだろうか。ユイは、毎晩来てくれた。

 ユイは、信じられないほど博識だった。それでいて、あどけないところがある。ものすごく変わっていて、ものすごく純粋なのだ。

 これで、十六か?そう思った。


「お前、本当に、十六なのか?」

 ある晩、訊いてみた。

「ううん。この前、十七になった」

「いつ?」

「戦闘の次の日」

 どう違うと言うのだ?

 あどけない返事だった。私が確かめたかったのは、あり得ない話だが、本当は、アラサーじゃないかということなのに。

 ユイは、農場で作業をしない。いつも、離れにある研究室で、凛博士や片山 翔とともに研究をしている。

 何度か、山道陽一や片山 翔に対等以上の口を利いて指示する場面を目撃したことがある。

 そうして、たまに、陽一や舜先生達と一緒に、ライフルを担いで猟に出掛ける。夕食に肉が出ると、たいてい、ユイ達が猟に出掛けて獲って来た獲物だと言われた。

 田圃に放してあった合鴨は、冷凍庫で保管してある。でも、秋なのだ。渡り鳥やなんかが飛来するし、ウサギや鹿も狩ることができる。先に、こっちを食べれば、合鴨を冬の食料にできるのだ。

 ライフルが使えれば、足が不自由でもユイと一緒に猟に行けるのに。そう思った。



どこの世界でもおばさんは、強い。桃源郷では、おばさんはみんな姑みたいな感じで最強なんです。

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