1話.さぁ、契約をしよう
今日は。砂糖雨です。
桜の舞う日々を、君と。
第1話『さぁ、契約をしよう』
よろしくお願いします。
「ふぁぁ……?猫さん……!」
寝ぼけた目をこすり、起き上がる少女。
カリカリと鉛筆を走らせる音。ぼんやり目を開けた俺は、少女の眼差しの奥に何処か彼女に似た、それでいて似て非なる色が見えた気がして。
「にゃ」
ゆっくりと目を開け、霧散していた意識を集める。手に、足に、頭に。
「ぇ、ぁ、え、え?」
戸惑う少女を横目に、姿をはっきりさせる。
人型。目の前でスケッチしていた猫が俗に言う黒髪男子、とかいう奴になったのを見て、この子はどんな反応をするんだろうか。
泣くか、叫ぶか、目を輝かせるか。
「……………夜……ですか」
「は?よる…?…ははっ」
あまりに突飛な発言に笑ってしまう。それを見て、少女も笑う。くすくすくす。全く調子が狂う。
はぁ
息を吐いて流れを変えて、言葉を吐き出した。
「君、名前は?」
「……さくら、です。」
さくら?桜、か?首をかしげる俺に構わず桜は続ける。
「あの、急に出てきて、名前は、とか。あの。…ご用件は……?」
おっと中々に鋭いな。
「悪い悪い。俺は、少し話があってきたんだ」
首をかしげる少女の前で俺は不敵な笑みを浮かべて、一言。
「俺と契約しないか?」
そう声をかけた。