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さて今朝も侍女にしっかり可愛く着飾ってもらいリーナに小言をもらいながらゆっくりゆったり優雅に学園へ向かいたいところだが実はそうもいかないのだ。
ある女を牽制しなければならない。
なのでしっかり可愛く着飾ってもらいリーナに褒められながらいつもより30分も早く学園へ向かった。
馬車の中で今日の作戦をおさらいする。
私がこんなに早起きして会いにいく女の名前はフィニィ・シンフェ。
このゲームの世界でアルマが最も簡単に攻略できるヒロイン、難易度激低女である。
彼女はアルマの転入したクラスでの学級委員長でありクラスで浮いてるアルマに話しかけるという聖人のような女なのだがその分攻略ししやすく数度のイベントをこなせばチョメチョメなシーンに突入できる。
私の脳内にあるゲーム攻略情報からみるとアルマがほかの女を攻略する際の土台、ハーレムルートへの入口としか思えないようなポジションなのだがこの女に万が一アルマが惚れて攻略してしまったら私はゲームオーバーである。
だがしかしこの女の存在は私にとっても都合がいいのだ。
土台を潰せばアルマがほかの女へ分岐する可能性は極端に減る。つまりほかの女、敵を絞れるということだ。なので私は脳内の情報に従ってフィニィ・シンフェが毎朝裏庭の花に水やりをしているという最高の機会を利用して芽を潰させてもらう。
それが今日のミッションである。
「お嬢様、いってらっしゃいませ」
「いってくるわ」
侍女に見送られ私は学園、いや戦場へ足を踏みいれた。
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結果を言えば簡単だった。
少し脅して甘い顔をしてやればフィニィ・シンフェは従った。
「これ以上アルマとお話しないで下さる?」
「言うことを聞いてくれたら次期生徒会メンバーに推薦してあげてもよろしくてよ」
この二言でフィニィ・シンフェは顔を真っ青にしたり真っ赤にしたりした。
きっと私に家を潰されるとでも思ったのだろう。そしてたったそれだけで自分が次期生徒会メンバーに入れるという欲望。
何も悪いことはない。
彼女の判断は実に正しいものであるし欲望に忠実なのはいいことだ。私も得して彼女も得する、まさに完璧な取引だった。しかし生徒会メンバーになれるということがそんなにいいことなのかと私は何度考えてみてもわからない。それはきっと私が働く必要のない公爵家の令嬢だからだろう。
この学園の生徒会に属するということは将来王宮での仕事にありつける可能性が高くなるのだ。
なので奨学金で入った平民や貧乏貴族などはその枠に入るのに必死になる。
だから男爵家の3女であるフィニィ・シンフェには有効的だと思ったのだ。
ちなみにあの金髪ドリルがその枠を奪ってるということに関してはノーコメントである。
これで3つの可能性を潰せた。
まずフィニィ・シンフェがアルマと恋仲になるという可能性
二つ目がフィニィ・シンフェを通して園芸部に所属するヒロインのうちのマリネーナ・エレストラと知り合えなくなる
三つ目がフィニィ・シンフェの頼みで生徒会の雑務を手伝いに行きあの金髪ドリルと知り合うという可能性。
お互いこんな広い学園の中じゃそんな特定の相手と知り合っても深くなることはないだろうしこれで3人のヒロインを潰したことになる。
このゲームのヒロインは5人、あと二人である。
ちなみによくゲームでは裏ルートや隠れキャラなどがいるがこのゲームでは全員の好感度を一定にしとかないと現れないのでそのキャラも潰したということになる。まさに完璧な計画。
「…リア様、ネリア様はどう思いまして?」
「…え?」
「春の舞踏会のドレスですわ!仕立て屋が言うには流行りは白だといいますけど白は太って見えるでしょう?」
「あら、貴女みたいに本当に痩せてたら太ってなんか見えなくてよ」
そんな私の言葉に軽やかな笑い声があがる
…いけないぼんやりしていた。今は私の友達、というか取り巻きと一緒に昼食中だった。
ちなみに春の舞踏会は1ヶ月後の5月に行われる。4月はいろいろ公式行事が多くて大変なのでこういった娯楽は後に回されたりしてる。だがあと一ヶ月、みなドレスを準備するのに忙しいのだ。
…ドレス、か。
『春の舞踏会のために新しいドレスをプレゼントするよ』
私はなんだか食欲がなくなってしまった。
舞踏会、来て欲しくないな。
「ネリア様?お食べにならないのですか?」
「…ええ、少し体調が悪くなったのでお暇させていただきますわ」
「まあそれは大変。お大事になさって」
そうして彼女たちはおしゃべりに戻る。
なんだか孤独感を抱えながら私は席を立った。
▽
皮肉なほどいいお天気だ。
ぽかぽかとした日差しは眠気を誘う。
私は学園の庭園の木の下で独りうとうとしてた。
…授業なんてサボって寝ちゃおうかしら
なんだか寂しいし食欲はないし全て忘れて寝たい気分だ。
「ネリア、お前何してんだ?」
…この男はいつも私が眠い時に現れるクセでもあるのかしら
「…うるさいわね。私は一人になりたいのだから放っておいてくださいます?」
「一人って…お前顔色悪いけど大丈夫か?」
そうやって頬を触ろうと近づいてきたてを―――
「触らないでっ!」
私は叩き落とした。
アルマはとても驚いた顔をしてた。
きっとこの時の私はいろいろどうかしてたんだろ思う。
「私は公爵令嬢ネリア・ローゼナートよ。貴方とは身分が違うの、わかる?」
ついひどい言い方になってしまう。
こんなんじゃアルマを攻略するなんて絶対無理だし嫌われていく一方だ。
「…お前、ちゃんと飯食べてんのか?」
「は?」
「そんなに顔色が悪いのも怒ってるのもちゃんと食べてないからだろ」
「…そんなのあるわけないでしょ」
確かに私は昼食を食べてない。だからイライラしてるというのは結構理にかなってる。
「よし、サボるぞ、とっておきのもんを食わせてやる!」
「は、はぁ!?」
アルマは主人公補正からのかのアグレッシブさで私を引っ張っていったのだった。
「ちょっと離しなさい!」
「お前が元気になったらな」
というか貴方転入して三日目でそれはどうなのよ?