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「おはようございます、ネリア様!」

馬車から降りてきた私を見て皆が道を開け頭を下げる

「ごきげんよう皆様、今日もいいお天気ですこと」

私は公爵令嬢として、この学園のお姫様として最高の笑顔で接する


「今日のネリア様も格段と美しいわ!」

「ネリア様と一度でいいから話してみたいぜ」

「馬鹿、お前なんか相手にするかよ」

「みてあの靴、すごく綺麗な白だこと!」

「さすが公爵令嬢ね」


生徒たちのこそこそとした話し声も慣れたものだ。

それほどまでに私は完璧で美しい。


だけど、あの男が転入してくるのは事前の調査によれば今日である。

気は抜けない。



                     ▼


「きゃぁぁ〜〜!」

「ちょ、あなたっ!!」

これはこのゲームの開始のイベントでもある。この目の前で転んでいる少女、アリス・メルーシャが大好きなトマトジュースをこぼしてしまいそれが公爵令嬢ネリアにかかってしまう。

そのことからアリスはネリアからひどく罵られるがそれを助けるのが主人公であるアルマ。

この日のためにしっかりと北の獣の革から最高級の真っ白な靴を作ったのだ。

「はわわわわぁ〜アリスのトマトジュースが無くなっちゃってます〜」

このアリスという女は巻き毛の銀髪に銀色の瞳の天然美少女、という設定であるが実際目にするとムカツクものだ。だって人にトマトジュースぶっかけて謝りもしないなんて天然どころじゃないでしょう。

「そこの貴女!私の靴が真っ赤になっちゃってるじゃないっ!この靴は今日届いたばかりの最高級の北の獣から作った真っ白な靴だったのよ!?どうしてくれるの!」

私の怒号にやっとアリスは気づいたように涙目になりながらふにゅふにゅと何か言ってる

ここまではシナリオ通り、のはずだけど実際私はかなり怒ってる。

未来がわかってるなら怒らないと思ってたけど侍女のみんなとキャッキャしながら一緒に相談しながら作り上げたこの靴を汚されてしかもこの謝りもされないなんて本当に頭にくるのだ。

泣きたいのはこっちだ。

「ちょっと、聞いてるの!?なんとかいいなさいよ!」

「――落ち着けよアンタ。こいつも悪気があってやったわけじゃないだろ」

主人公、登場である。

茶髪に茶色の瞳、あ、少し金色がかかってるのね。顔は普通かと思いきや結構整っており釣り目がちな瞳と薄い唇、日に焼けた肌が野性味があってあまり貴族の子息にはいないタイプだ。

「ほら、そこの銀髪今のうちに逃げな。これ以上ここにいると女王様がヒールで踏んでくるかもしんねぇからな」

そう言われ頭を軽く撫でられたアリスは顔を真っ赤にさせながら「あ、ありがとうございますぅ〜」といいながらとっとと逃げていった。

「じゃあ、一件落着だなお嬢様。あんま怒ってると早死するぞ」

「余計なお世話よ!それよりどうしてくれるのかしらっ、貴方のせいであの女を逃がしちゃったじゃない!」

「まあいいじゃないか。俺に免じて許してくれ」

「なに、貴方がこの靴をまた手に入れてくれるのかしら?そんなことは出来ないでしょうね!だって貧乏臭い香りがぷんぷんするものっ!」

「確かに俺はあんたみたいにお金持ちじゃないかもしれないがその言い方はないだろ」

「ハッ、どうせまともな育ちをしてないから私に刃向かうなんてことができるのよッ!覚えてなさい、明日には貴方の家ごと――」

ここでシナリオでは私は主人公に叩かれるのだ。

実は主人公は伯爵家の当主がメイドに孕ませた子供で一年前まで下町で暮らしていたが伯爵家の後継が死んでしまい急遽引き取られるのだ。

自分の育ちを馬鹿にされた主人公は悪役女である私を叩くはずだが――

「―ふにゃっ!?」

なぜだが頬をひっぱられていた

「にゃ、にゃにゅを!」

「あんたがこんな美人さんじゃなきゃ頬ぐらいは叩いてたところだがこれで勘弁してやる」

「わ、私はローゼナート公爵令嬢よ!?こんな無礼許されると…!」

「じゃあな用事が出来ちまった。…あとあんたは赤も似合うと思うぜ女王様。」

「待ちなさい無礼者っ!」

アルマは人ごみの中にすぐ消えてしまった。

私は一人廊下で取り残され周りの観衆はどう私に声をかけていいかわからないみたいだ。

「ね、ネリア様とりあえずお靴を…」

「うるさいっ!」

「ひぃ!」

鬼気迫るようすの私に頑張って話しかけてきた生徒は腰を抜かす

「もう、こんなの全然シナリオ通りじゃない…やっぱり容姿を変えたのが悪かったのかしら…でもやっぱ頭に来るわっ!」

私は確かに神に能力を付けてもらう際お姫様のような容姿を頼んだがこんなことになるなんて…!!


「――ネリィ、君の美しい髪がこんなに乱れてる。少し落ち着きなさい」


いきなり私の肩を抱いたのは一人の男子生徒、そして私の婚約者であるクレイグ・レベラ・フェードルドだった。

「ほら、靴を変えに行こう。それに髪も乱れてるから結直してあげよう」

そう言い私をいわゆるお姫様抱っこするクレイグ。

「…まるで王子様みたいなことなさるのね」

「あははははっ、僕はこの国の王子だからね。少しキザでも許しておくれ」

そうなのだ。

この男はこの国の第一王子であり次期国王、だから私も少しは気を遣う。

「可愛いねネリィ」

軽いリップ音とともに額に感じる唇に私はすこし酔ってしまった。




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