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不定期  作者: ネームは思いつかないな
3/3

夢鬼ゲーム

 夢鬼の噂はあった。

 ―—夜、眠っていると誰かに起こされる。そのおこしかたはかなり荒く、もしそのときに目が覚めてしまったとき、暗闇に包まれた場所で鬼ごっこしなくてはならない。だから、どんなに揺さぶられても目を開けてはいけない――

 そんな忠告をクラスメイトが囁いていたのを聞いていた。


 自分の名は松風まつかぜアオリ。特に目立つこともなく、空気ともいわれているほど影が薄い存在だ。そんな自分に普通に接してくれる男がいた。そいつが上杉うえすぎミツオだ。

 ミツオは自分と違い他の学校でいざこざがあり急きょ、2か月前に転入してきた人だ。

 自分を見かけるなり、ミツオは自分に話題を載せて接してくれる。そんな彼を少しながら自分は好きだった。大した話題もないのに、話しかけてくれるそんな彼を。


 彼が転入してきた理由はミツオの口から出してくれたのはそれから3週間後のことだ。クラスメイトのうち2人が突如と、意識不明となって自宅で倒れていたところを家族によって発見されたらしい。

 2人同時期に倒れたようで、原因はわかっていないとのことだ。

 それからか、ミツオは何かに怯えるように自分とは逆に影になりつつなっていった。そんな時だった。彼が口にしたもの。それが――夢鬼だった。


 夢鬼はオカ版で少し有名な怖い話だ。

 内容は小学生たちが“夢鬼”について語ることから始まり、実際に夢鬼と遭遇したことを書いている。本人は大人で当時の出来事をなるべく思い出す形で書いている模様。夢鬼となった最後の一人が永遠に冷めない夢の中に閉ざされ、代わりに前夢鬼だった人は助かったという。

 この内容からして、語り手の不注意によって悲惨な出来事へと進展させてしまったことと友達の軽はずみで起きた出来事だ(省略)。


 それとどういう関係があるのか。

 ミツオに話しを訊いてみた。

 だが、ミツオはそのことに関しては何も語らず、自分から遠ざけるかのように自分からも自然と去るような形となっていった。


 そんなある日、目をつぶっていると誰かに体を揺さぶられつつ、強く押されるかのような感じがした。だれだ? と思い、目を開けるなりはっと思い出す。

 ―—誰かに荒く起こされそうになっても、目を開けてはいけない――

 だが、間に合わなかった。その影ともいえる黒一色の人型に手を握られ、どこか黒く一色となった壁の中へ押し込まれる。普段はそこに黒い壁などなく窓ガラスがあるはず。

 だけど、そのときはそんなものはなく、ただ一色の黒い壁があるだけだった。

 自分は抵抗したものの、黒い人影によって黒い壁の中へ押し込まれる。それは到底人間技とは言えないほどの鋭く強い押し込みで、どんなに体を動かしてもうまく動けないほど強く押し込みだった。

「っく、なんだ」

 黒い壁のなかへ押し込まれる中、奥の方に誰かが手招きしている姿が見えたのだが、その姿を見渡せるまえに黒い人型によって壁の中へと入れられてしまった。


 目が覚めたとき、そこはどこかの学校らしい。広く広がる異常な長さの学校が目の前にある。粘土のように横に引き伸ばしたかのような感じで、その左右の広さはどこまで続いているのかわからないほどだった。

「な、なんだよ・・これ?」

「こっちがききたいよ」

 聞き覚えがある声がした。その声へ目を傾けると、クラスメイトで行方不明になっていた2人の姿があった。

「おまえら、なにしてんだよ。こんなところで」

「知るか! 俺らが聞きてぇ」

 2人も同様している。

「ここは、死の鬼ごっとのステージだよ」

 そう口にしたのはミツオだった。

「死のゲームとは何のことだよ!?」

 と、ミツオの襟首をつかみ上げながら荒く声を上げた。彼の事情もわかる。だからと言ってそこまでする必要はないはずだ。自分はその男からミツオから手を放すようになだめる。

「っつ」

 怒りをぶつけたいのか苛立っているようだ。

「なあ、俺ら・・これからどうなるんだ?」

 いなくなったもう一人が、先が見えない状況で怯えた様子で口をゆする。

「鬼という存在から逃げ続ければ、この現状から逃げ出すことができる」

 と、ミツオは後ろ向きながらそう口にした。

「逃げ出すだって? 俺たちはもう3週間近く逃げ回っているんだぞ。どうやって逃げ出せるんだ!?」

 そんな・・と思わず口からこぼれそうになった。

 倒れたときから3週間近く逃げ回っていたのか。ミツオが言うには逃げ続ければいいということなのかもしれないが、一体何時間何日何週間何か月逃げ続ければよいのだろうか。

 しびれを切らしていた男がミツオに怒鳴りつける。その男は自分たちが知る人ではない。服装からして学生服を着ていることからどこかの学校の生徒のようだ。

「逃げ続ける? はっ、バカらしい。逃げ続けて逃げられないなら、いっそ、殺しちまえば勝てる話じゃねえかよ」と。

 確かに死ぬゲームとはいえ、逃げ続けるだけでなく殺す・・・倒せば終わりになるんじゃないのかと頭の中で浮かんだ。

 ミツオはそのことについて何も疑問を問わなかった。

「それじゃ、ゲーム開始と同時に、俺様は鬼を見つけるなり攻撃するから、お前らは邪魔をするなよ」

 と、一人だけなのに威勢がよく吠えていた。

「何も知らないくせに・・」

 ミツオが静かに息を吐くかのようにこぼしていた。


「・・・・・・俺らができることはするぜ。とりあえず逃げ続ければいいんだよな」

「ああ」

「・・・・・・なあ、本当に逃げ続ければこの悪夢は終わるんだよな」

「そうだ」

「そうか、そうだよな。永遠に続く悪夢なんてあるわけないもんな」

 と、笑みを浮かべながら笑いをこみ上げる。彼はもう冷静だったのかそうでないのか。いや、後者の方だろう。もう、冷静でいられるのは時間の問題なのだろう。


 同じクラスメイト2人が別々に逃げていき、校門前に残されたミツオとアオリは、学校の中に入らずその場に立ち止っていた。なぜ、動かないのか、なぜ立ち止ったままなのか、アオリはミツオに訊いてみた。

 すると、ミツオから意外な返答がきた。

「この夢は冷めない」

「え」

「誰かが最後のひとりになるまでは・・」

「え、最後って・・」

「最後のひとり。俺たち5人の中から1人になるまでこの悪夢は続く。人数は毎回補充され、鬼となった者は記憶をなくし、この冷めない世界から去りたくて人を探して捉える。」

「ちょ・・・ミツオ君」


「なあ、アオリ君は、このゲームについて終わりがあると思う会?」


 顔を上げたミツオの表情――いや、だったものがこちらに向けたとき、自分の人としての道が終わった。


「鬼となった者は・・人を探し、捕まえなければ終わらない。」



 続きは評価次第。


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