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不定期  作者: ネームは思いつかないな
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黒主人公①

 黒く閉ざされた刃物の刃がゆっくり体内に切り裂き、今までの日常が崩壊した。


 ぼくはなにもできないまま、ただ怯え、その時の状況をただ眺めることしかできなかった。


 “魔物が人間や他の生物に牙を迎えた姿”だった。


 遥か数百年前に、人間と魔物と和解の条約として“和平組国”を交わされた。人間や魔物たちは互いに弱い生物たちを自由気ままに殺さない条件とお互いの良い土地や物々交換、差別をしないなどいくつかの条約を結ばれた。


 最初は多くの人間や魔物は反対した。


 けれど、温厚な2人の友情ともいえる厚い光と闇の手によって交わされた光景はだれしも反対をすることをためらった。光と闇は反射的で喧嘩になるような属性だと誰かが決めつけていたのだが、この時の光景に、誰しも争いごとに関して馬鹿げていると考えるようになった。


 それが――、一人の主人公となる腹黒い主人公ブラックマスターとその仲間たちの手によってこの条約は破棄された。すべての始まりは20年前に遡る。


 エルドが生まれたのはちょうどブラックマスターが誕生した同じ時期だった。

 互いに干渉することもなく、それぞれ違う文化と歴史、種族のなかで生まれた。


 エルドは魔物と人間との間に生まれたハーフ。人間よりのハーフだった。見た目は人間で、魔物と値する小さな尻尾がある程度の違いだった。尻尾は黒紫色で、ときどき小さな蒼い光を放つ程度だった。


エルドは生まれたときから魔法による想像に長けており、誰に教われることもなく、魔法を編み出しては披露していた。


 ブラックマスターは人間と人間との間に生まれた人間だった。


 生まれたときから剣の才能も知恵の才能もなく、ごく一般にみられる“才能がない”育ちだった。才能が一つもないことに村の中でも嫌われていた。人から教わっても、身につくことなくその人は去って行ってしまう。そんな人生を暮らしていた。


 互いにそれぞれあったのは6年後の祭りだった。


 “和平条約”を結んだちょうど400年目の祭りだった。


 エルドは新たに創りだした魔法をお披露目のために、魔法境界の元、祭りの重要参加者として呼び出されていた。


 ブラックマスターは親に連れられ、才能にあふれた祭りをみれば、きっと自分だけの才能が見つかるかもしれないと思い、この祭りに思いを込めていた。


 だが、運命のいたずらなのか、2人にそれぞれの刻印をこの時に押された。

それは、ブラックマスターが親元から離れ、一人の新米となる魔導士のもとへ歩み寄っていたときだった。


 ドンっと誰かにぶつかり、ブラックマスター(以下、少年)は、謝りもせずに立ち去ろうしたとき、その者に肩をグイッとつかまれた。


「謝らないのか小僧」


 それは、魔法境界の人だと、すぐに分かった。


 白いオペラのような仮面をかぶり、口元だけは素をだし、黒いガラスのようなものではめ込んだ眼はとても暗く少年にとっては沈みゆく遥か深海の底へ誘うかのような目に見えた。


「…ごめん」


 少年はうつむきながら軽く謝った。


 その魔法境界の人の顔を見たくないという不思議な気持ちが揺さぶったからだ。


 魔法境界人が去った後、少年は草むらとなるそこに座り込み、なにも浮かばない空へ顔を上げて見つめた。魔法境界の人にもとくに声を掛けられることも心配されることもなく過ぎ去ったいま、“才能がない”と刻印された自分に対してひどく哀れでとても寂しいものだと深く心に刻みこまれた。


 魔法境界の人は“才能があるもの”に対してはとても豊か層に接し、魔法境界へ行かないかと誘う風習のようなものがあった。それは、一生“魔法境界で働かないか”という将来を見込んだ誘いでもあったからだ。


 これに同意する親は多い。


 魔法境界に入った者は一生巡られ、この世界にはない世界も歩き回る権利も与えられるからだ。


「どうせ、ぼくは・・・」


 少年は再び虚ろむき、たいそう座りで頭を深く静めた。


 生まれたときに“才能がない”と刻印をうたれたとき、人生は明るいものではないと悟ったからだ。6歳にして深みを感じた少年は、生きている勝ちでさえないと思ったほどだった。


 そんなときだった、一つの青白い光が空へはなたれ、雲一つ見られなかった光があっという間に白い雲や蒼い雲、赤い雲などを作り上げた。


 その光景を創りだしたのは6歳にして新米のエルドの手によって創り上げられたものだった。


 エルドと直接素であった訳でなかったのだが、このときの少年は希望も創り上げるその才能に惚れた。


 魔法境界において、エルドが新たに作った〔天候色雲〕は、その雲の色に応じて天候が変わるというものだった。この報道はたちまち広がり、人々はエルドにくぎ付けとなった。


 魔法境界がこの魔法のすごさに大きく過大評価したのは2か月後だった。他の魔道士よりもエルドが開発した魔法がすごいという評価は魔法境界の上に立つ者でさえも圧倒したものだった。


「いやはや、すごい若者が生まれたものだ」


「これは将来が楽しみですぞ」


「ぜひ、我が魔法境界へ来ていただけないでしょうか」


 など、招待が日々贈られるようになった。


 これはぜひとも親はエルドを魔法境界へ贈りたい一心だった。


 だけど、エルド自身は魔法境界などという将来希望性は特に興味がなかった。生まれながら才能を持ち、さまざまな魔法を開発してきたが、自身の底に沈み切った何かが心地よいと思ったことはなかった。


 エルドは魔法境界へお手紙を出し、こう宣言した。


「せっかくの誘いのところ、誠に申し訳ないのですが 今回の件につきましては断らせていただけないでしょうか。わたしとしてもこのような名誉なことはとてもうれしいでございます。ですが、私はまだ7歳です。今日で7歳になった私ですが、まだ魔法といった深いところは知りえません。もう少し成長次第、案件を引き受けてもよろしいでしょうか」


 と、返事をだした。


 もちろん、魔法境界からは批判がきたものの、上層部はそれを心得て、ゆっくり待とうと検討を押した。


 この通知が来たのはすぐ後で、世間を騒がせた一件でもあった。


 10歳になったエルド宛てへ、一人の少年から呼び出しがあった。


 それは、呼び出しのような手紙は毎日のように届けられていたが、その手紙には意味深なことが書かれており、エルドは興味を抱きながら少年の元へ向かった。


 新たな召喚魔法を開発したことで、人早く誰にも見せたいという気持ちもあった。


 遠い浜辺。人がほぼ近寄らないこの場所は、はるか昔、骸使いが戦争のために無数の屍を集めたとして注目を集めた。骸使いは屍を操るかのように魔法を使うとしたのだが、屍を操ることは成功したのだが、そのあとの命令が効かないまま食い殺されたという異例の問題が起きた。


 起き上がった屍はゾンビとなり、あたり周辺を大問題に発展させ、魔法境界の人々が派遣されこの問題を解決するべく大きく踏み出した。


 魔法境界において、“屍の蘇生”は禁止され、以降この魔法を知った者・使ったものは即座に、魔法境界へ転送され、一生牢獄で暮らすことになるようになったとされる。


 そんな過去と出来事を発症したこの地は、異例な地とも呼ばれる。


「君が呼び出した少年かい」


 エルドは少年に問うた。


「そうだよ。ぼくはきみのファンだ」


 少年は気持ちよさそうにエルドに返した。


「そうか、うれしいよ。ぼくはエルドというんだ。人間と魔物の間に生まれたハーフで、どっちかつうと人間よりなんだけどね」


「そうなんだ。ぼくは人間との間に生まれた普通の少年だよ。名前はエルドというんだ。君と同じ名前なんだ」


「へー、ぼくと同じ名前なんだ。うーん、同じ名前だとややこしいな。」


「そうだね」


「それじゃあ、ぼくはハーフだから『エルドH』だ。君は普通だからノーマルの『エルドN』だ」


「……」


「実はね、折に召喚魔法を新たに開発したんだ。最初の当事者として見てほしいだ」


「いいよ」


「やったー!」


 エルド同士 同じ名前。違う出生だけど、どこか似たような感じでもあった。

 だけど、この召喚魔法が原因で2人の関係は大きく歪むこととなった。もちろん、記憶も、君(エルドN)と出会うまでは思い出すこともなかっただろう。


 深く目を開けたその時の光景は焼け崩れ去った黒い炭と灰に覆われたかつて故郷とも呼ばれた村があった。その村には群がる虫と獣だけで、かつての繁栄は亡くなっていた。


 そして、エルド(H)は、魔王という大災害の始まりとした刻印として打たれていたことに知ったのは2年後の出来事だった。


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