プロローグ
夢を見た。
「サタナエル様」
名前を呼ばれ振り向くとそこには
わたしを見、にっこりと優しく微笑む女性。
「この辺りは春になるとたくさんのチューリップが咲くんですよ」
「サタナエル様もきっと気に入っていただけると思います」
「春になったら一緒に見に来たいですね」
「あぁ、そうだね。春になったら2人で来よう。約束だよ。」
「はい!約束です!指切りげんまんですからね!嘘ついたら〜...」
彼女は嬉しそうにはしゃぎながら
「もうサタナエル様とは、会ってあげませんからね!」
彼女はわたしの前にきて指で✕を作る。
「はは。嘘はつかないよ、来年も再来年もその先も2人で見に来よう。」
「それに」
わたしはナズを抱きしめ
「ナズに会えなくなるなんて、わたしには耐え難いことだ」
そう言い彼女の耳にキスをした。
「ふふふ、サタナエル様、冗談ですよ。わたしもサタナエル様に会えなくなるなんて耐えられません。」
ナズはわたしを見上げ
「だって、こんなにもお慕いしているお方なのに...」
ナズは少し恥ずかしそうに笑い
わたしの胸に顔を埋めた。
そんなナズをとても愛おしいと思う。
こんなにも近くにいるのに
もっと近くにいたいと思う。
「ナズ...」
はい...と顔を上げるナズに
やさしくキスをした。
いつもここで目が覚める。
2人の淡い約束は果たされることはなく
そしてこの日を最後にもうナズと会うこともなかった。
わたしの想いはあの日で止まったままだ。
ナズ...
わたしの愛しい
わたしの恋人