第五話 エルド、空を飛ぶ
「う...ん?」
何かこの世界に来てから気絶ばかりしてる気がするぞ。
「お?...おお!?」
目を開くと青々とした広大な草原が広がっていた...。眼下に。
「チュンッチュンッ」
「嘘ぉ...」
首を下に捻ると大きな鳥の足が俺の腹をガッチリと掴んでいる。
片足だけで俺の上半身くらいの大きさがある...。
「チュンッチュンッ」
「この鳴き声は...」
振り返って見るとそこにいたのはやはり雀だった。
しかも異常に足の長い雀だ。
と、とりあえず鑑定してみるか。
ロングレッグスパロー Lv.84
なんだ84か。84!?はち...はぁ!?
おいこいつ本当に雀か!?
雀ってそんな強いの!?
いや、デカイけども!!
落ち着け俺。
きっとこの雀が異常なんだ。
雀の王様的なあれだ。うん。
普通はいくらデカくても雀だし、雛の時点で食われたりするんだろう。
きっとそうだ。
マジすいませんでした。
雀さんのこと舐めてました。
本当申し訳ないです、はい。
ロングレッグスパローに連れられて来たのは巣だった。
草原に堂々と鎮座しているその巨大な巣には1匹の雛が口をパクパクさせている。
く、食われる...!
え?雀?なにそれ美味しいの?
と言わんばかりの凶悪なフォルムのお雛様はこちらにそのくちばしを開いたり閉じたりしている。
「あの、本当謝るんで食べないでください...」
俺はもう半泣き状態だ。
「グゲッ!グゲッ!カココココココ!」
鳴き声が絶対雀じゃないじゃん!
なにそのくちばし鋭すぎるわ!プテラノドンか!
そして体表は毒々しい紫だ。
羽毛が若干生え始めているのでより一層不気味な見た目になっている。
食われる...絶対食われる...。
どうにかしてこの場を切り抜けなければ。
はっ!こんな時こそあれがある!
「すいませんでした!」
完璧だ!頭の位置、背中の曲線に至るまで理想的な土下座だ!
これならいける...!!
「クコココ...」
近い近い近い近い近い!
なんか鳴き声が近いんですが!?
「うひぃっ!」
つつかれた!もうダメだ...っ!
意を決して固く目を瞑る...。
体中を暖かな体温が包み込んだ。
すわ!食べられたか?
と思ったのもつかの間。
痛みが襲ってくる所か柔らかな感触とくすぐったい感触が同時に感じられた。
恐る恐る目を開くと、雛は俺の体を自分の体を包み込んでいた。
「グゲッ!」
雛が一声鳴くと俺の体を柔らかな光が包み込んだ。
何が起こったかはすぐにわかった。
先日リトルウルフにつけられた傷の痛みが無くなり、目を向けるとやはり傷が塞がっていた。
「お前...治してくれたのか。ありがとう」
「グゲッ」
言葉が通じたかはわからないが、俺の言葉に短く鳴き声を返して俺から離れた。
見た目は相当危ないけど実は優しいやつだったんだな。
もしかしたらあの親雀も俺が倒れていたからここに運んでくれたのかもしれない。
結局なんで倒れたんだろう...?
腹を激痛が襲った所までは覚えてるんだが...。
まあいいか。
「チュンッチュンッ」
思案に耽っていると親雀が巣に帰って来た。
「グゲーッ」
「おかえ...うぇっ!?」
一応助けてくれたのだから迎えようとした俺だが親雀がくわえていたモノを見た瞬間に血の気が引いた。