第二話 額を床に擦り付ける簡単なお仕事です
「うーん...」
目が覚めると、いわゆる『知らない天井だ』状態だった。
つまり、今俺は屋内に居るらしい。
「目が覚めた?」
声のする方へ顔を向けると深い藍色の髪を持つ美少女が椅子に腰掛けていた。
歳は20代前半くらいに見える。
そしてかなり大きい。
どこがとは言わないが。
「道のど真ん中で倒れてるものだから驚いたわ」
あいつ俺を生かす気あんのか?
魔物的なサムシングに襲われたらどうすんだ。
「あなたが助けてくれたんですね」
「ええ、私はイリーナよ」
「俺は...エルドです」
あっちの名前は出さない方がよさそうだな。
イリーナとかエルドとか和名とは程遠い名前が多い。
突っ込まれたら面倒臭い。
「ここはどこですか?」
「ここは始まりの地エルディアよ」
「始まりの地?」
RPGとかだとスライムとかが出て来そうな名前だ。
「ええ、ここには低級のモンスターしか生息して居ないのよ」
「初心者の育成に適しているから始まりの地って呼ばれてるってことですか」
「そうなるわね」
ちゃんと安全面は考慮されてたらしい。
疑ってごめんよ。
「それで、あなたはなぜあんな所で倒れていたの?その馬鹿丁寧な言葉遣いと関係があるのかしら?」
「言葉遣いはまあ癖みたいなものです」
「ふぅん」
イリーナは値踏みするような視線をこちらへ投げ掛ける。
なんか盛大に勘違いされてる気がする。
「俺があそこで倒れていたのは...」
なんと答えるべきか...。
「あー、言わなくていいわ」
「はあ、そうですか」
「面倒事はごめんなのよ」
やはり何か勘違いしてるみたいだ。
ボロが出そうで怖いから訂正はしないでおこう。
「それで、あなたはこれからどうするの?」
「どうする、と言うと?」
「はあ...まさか何も考えずにここへ来たとでも言うのかしら?」
「えーと、あはは...」
俺だって何がどうなってんのかわからんわ。
とりあえず話題を変えよう。
「あー、イリーナさんはお仕事は何をされているんですか?」
「...冒険者よ。まだまだひよっこだけどね」
「冒険者!?」
異世界っぽいの来た!
あっちでもファンタジーとか大好きだったんだよな。
「ははーん。さてはあなた冒険者に憧れてるクチね?」
「そりゃあ俺も男ですから」
「ふふ、私も昔はそんな顔してたのかしらね」
異世界で初めて出会ったのが冒険者とは僥倖だ。
冒険者なら見聞も広そうだし、何とかこの人からこの世界について教わらないと。
「冒険者について教えてください!俺、冒険者になりたいんです!」
こちらの本気が伝わるように目を逸らさずハッキリと宣言する。
貴重な情報源、逃してなるものか。
「...ふふ、あなたみたいな生意気な初心者が潰されちゃうのは面白くないわね」
イリーナさんは俺に鋭い視線を飛ばした。
「そうね、私がわかる範囲でなら色々と教えてあげなくもないわ」
「本当ですか!?」
なんだ、一瞬断られるかと焦ったけどあっさり了承してくれたな。
「あー、でも私ってこう見えて面倒臭がりなのよね」
「え?」
「私のやる気が出るような頼み方をしてくれないかしら?」
「それはどういう...」
「そうね、土下座なんて良いかも知れないわね」
「...」
Sか...悪くない!
9月29日イリーナの歳を10代後半から20代前半に修正しました。
それと微妙に文章を修正しました。